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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 11:44 ×
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December / 29 Fri 22:25 ×
「神楽椿(かぐらつばき)です。よろしくお願いします」

とある有名私立高校。この高校に一般人はほぼ入学できない。

なぜなら、ここは社会的地位が高い者、いわゆる上流階級の子息が入学する金持ち専用高校だからである。

完璧な環境と設備。有名デザイナーが手がけたと言われる白い制服―――それだけ色々と金を使う。

しかし、極一部に一般人がいる。そういう生徒は、頭脳が高いなどの【特別】な生徒だ。

特別な生徒の場合に限り、授業料を減免してくれる。

そんな高校に転校してきた少年―――神楽椿は自己紹介で必ず言う台詞を言った。

椿は女の様な綺麗な顔立ちだった。そして、肌は雪のように白い。

痩身で身長が高く、足が長い。一目でクラス皆の目を引いた。

教師が椿の事をクラスに伝え終わり、椿は自分の席に向かった。

一番後ろの窓際の席。椿は静かに椅子を引き、座った。

隣に座っている女子の視線や担任の話を無視して、窓からの景色を見た。

広いグラウンド。椿はその広過ぎるグラウンドを見つめた。

何処かのクラスの男子がサッカーをしている。かなり、盛り上がっているようだ。

休み時間を告げる鐘が鳴った。と、同時に椿を囲むクラスメイト。

口々に椿に問いを投げかける。

「神楽ってあの、【神楽財閥】か?」

「ねぇ、前はどこの高校なの?」

「何で転校してきたんだ?」

椿は無言で席を立った。一瞬、クラスメイトがすくんだ。

冷たく一瞥すると、椿はにこりと微笑んだ。

「悪いんだけど、用事があるから……失礼するよ」

椿はクラスメイトの間ををすり抜け、教室を出て行った。




椿は三年A組の教室の前にいた。扉を開き、目的の人物を探す。

その人物はいた。窓際の近くに友達とニ、三人で話ている。

椿は迷わず、その人物に向かった。椿はとびっきりの笑顔でその人物に話し掛けた。

「今日和。楓先輩」

「雫?」

声をかけられた相手は、驚いた表情で椿を見た。

「弟の椿です。先輩、お元気そうですね」

椿はにこりと微笑み、楓に会釈した。

黒岩楓(くろいわかえで)。童顔で背が低く、年より若く見える。そのせいか、椿の方が年上に見えた。

楓はそんな自分の顔を嫌っていたが、女子の間では人気だ。いわゆる可愛い系の少年だ。

その上、優しく愛嬌もあるのだから人気が出ないわけがなかった。

楓とは親ぐるみの付き合いで、小さい頃から知っている。しかし、三年前、椿達は引っ越した。手紙のやり取りなどはしていたが、会う事はなかった。

「ご、ごめんね。雫と間違えて……久しぶりだね、椿。元気だった?」

楓は顔を赤らめ、椿に謝った。

その様子を、椿は冷たい眼差しで楓を見た。そして、微笑んだ。

「今日こっちに転校してきたんです。よかったら、今日家に寄りませんか?姉さんも喜ぶと思うんで」

「えっ?雫も一緒に転校したんじゃないの?」

その問いに椿の顔が曇った。そして、重い口を開いた。

「姉さんが……雫姉さんが体調を崩して今、寝たきりなんです。それで、先輩さえよければ今日、姉さんに会ってくれませんか?」

「そうか……雫が……」

楓はしばし考え、頷いた。

「良いよ。俺でよければ」

「有難う御座います!俺帰り、校門で待ってますね。それじゃ、失礼します」

椿は楓に一礼し、教室を出て行った。

「せいぜい、喜んでれば良いさ……」

椿は小さく吐き捨て、自分のクラスに急いで戻った。




放課後、椿と楓は一緒に帰っていた。

普段なら楓には迎いの車が来るのだが今日は椿と一緒に帰る為、断ったのだ。

楓は、そわそわしていて落ち着きがなかった。

正直、三年ぶりに会った椿がまさか、こんなに成長するとは思っていなかったからである。

三年前、家が近くよく椿の姉【雫】と三人で遊んだものである。その頃の椿は、優しいが弱々しい少年であった。

しかし、今はそんな弱さを感じられない。雫も変わったのだろうか。

「先輩、落ち着きがないですね」

「えっ?そうかな。久しぶりに椿に会ったものだから少し緊張しちゃって」

楓は照れくさそうに笑い、顔をうつむけた。椿は冷ややかな瞳で見ている。

「姉さんも先輩に会いたがってますよ。ああ、もうすぐ見えてきますよ」

椿が二階建ての家を指差した。普通の一軒家である。

「ここが家です。今開けるんでちょっと待ってください」

椿は玄関のドアに鍵をさし、開いた。中は薄暗く人の気配を感じない。

「どうぞ。上がって下さい」

椿は靴を脱ぎ、家の電気をつける。家は暖かいオレンジの光に包まれた。

「お、お邪魔します」

楓はいそいそと靴を脱ぎ、家に上がる。結構広い。楓が家を見回していたら、椿が階段を上がっていってしまった。

楓は慌てて後を追った。階段を上る音が響く。二階に上がると、椿が一番奥の部屋の前に立っていた。

「遅いですよ、先輩」

「先に行かないでよ、椿~」

楓は少し息を切らしていた。思ったより、緊張しているようだ。手が汗ばんでいる。

椿は部屋を軽くノックし、部屋に入った。楓も後に続く。

「ただいま、姉さん」

部屋はとても綺麗で、ぬいぐるみや花柄のインテリアが置いてある。

置くにベッドがあり、そこに少女がいた。さっきまで本を読んでいたのか手元に閉じた本がある。

椿と見間違うほどの美しい少女だった。椿との違いは少女の方が髪が長く、痩せている。病人のように顔色が悪い。彼女が椿の姉「雫」である。

椿は雫のベッドのところに行く、隣にしゃがんだ。楓も後を追う。雫は笑顔で椿を迎えた。

「お帰りなさい、椿」

「姉さん、楓先輩が来てくれたよ」

「久しぶりだね……雫」

楓は精一杯の笑みを浮かべ、椿と同じようにしゃがみ込む。

雫は驚いた表情をし、恐る恐る楓に声をかけた。

「……楓君?本当に?」

「本当だよ。雫、身体大丈夫?無理しないでね」

「嬉しい……私は大丈夫よ……」

そう言うと雫は両手で顔を抑え、泣き出した。椿と楓は顔を見合わせ笑った。

「姉さんは泣き虫なんだから……」

椿と雫は一卵性の双子である。普通に考え、性別の違うもの同士はありえない。

しかし、人間の身体は今だ20%ほどしか解明されておらず、何が起きるのかは予測できないのだ。

極稀な確率で雫と椿は生まれた。雫のほうが椿より感受性が強く、椿は雫より運動神経が良い。

どちらかが足りないものを持って補っている。

「雫、泣かないで。昔とちっとも変わらないね」

楓は優しく、雫の髪を撫でた。三人は昔話に花を咲かせた。




時計が七時を告げ、楓は帰り支度をして椿の家を出て行った。

最後まで名残惜しそうだった。

「姉さん、大丈夫だった?」

椿は雫のベッドに頭を預けた。雫が椿の髪を撫でた。母のように椿を慈しむ。

「私は大丈夫……彼はなんとも思っていないようね」

月光が雫を照らす。口元には微笑を浮かべている。雫は美しかった。誰もが目を奪われるだろう。

「そうだね。俺はアイツを許さない……絶対に」

椿は歯軋りした。自然と手が拳になっている。

「ありがとう、椿」

「俺が姉さんを守るよ。だから、安心して……俺は姉さんを愛しているから」

椿はそう言うと、瞳を閉じた。

「ええ。私も椿を愛しているわ……」

雫は微笑んでいる。その瞳には、感情というものはなかった。




数日後、学校の昼休み。楓は椿を尋ねた。椿は窓際の席で、同級生達とお弁当を食べていた。

女子たちが楓の存在に気づき、騒ぎ出す。椿も楓に気づいた。

楓は女子なんて眼中にないのか、椿の元による。椿は箸を置き、微笑んだ。

「こんにちわ、楓先輩」

「ごめんね、お弁当食べてる時に来て」

椿が楓をチラッと見た。その瞳には軽蔑の光が含まれている。

「気にしないで下さい。で、何の用ですか、先輩?」

椿はにこっと微笑み、楓に聞いた。楓が照れながら笑った。

「明日、雫暇かなぁって思って」

「さぁ……姉さんに何か?」

椿の表情が変わった。疑るような瞳で楓を見た。

しかし、楓は気づいていない。楓は頬を少し紅くしている。

ただ、雫の事しか考えていないのか、椿を見ていない。

楓は毎日のように椿の家に足を運ぶ。椿は気をつかってか、いつも何処かに姿を消す。

楓はそんな椿に感謝の気持ちでいっぱいだった。そのため楓は、椿に雫について色々相談する。

「そ、そのう、あ、明日」

「姉さんとデートするつもりですか?」

椿にさらっと言われ、楓は顔を紅くした。自分の顔がとっても熱いことがわかる。

「ひ、久しぶりに会ったし、どこか遊びに行きたいなぁって……」

口をもごもごさせながら楓は言った。言葉の最後らへんはもう聞き取れない。

椿は声をあげて笑った。椿が声をあげて笑うのは珍しい。普段、口元しか笑わない。

「わ、笑うなよ!」

「あー、オカシ。でも、俺は姉さんと出かける事に賛成できませんね」

椿が突然、真顔になった。瞳が冷たく輝く。椿の気迫に押されてか、楓がびくっと身体を震わせた。

「姉さんはあの通り身体が弱いんです。遠出なんかされたら倒れます」

椿は吐き捨てるように言った。楓は黙った。椿の言うとおりだからだ。

雫は身体が弱いから、学校にも通えない。それを遠出させる方がおかしい。

楓は自分の事しか考えていない事を思い知らされ、自分を呪った。

椿がくすっと笑った。なんて冷たい笑みなのだろう。

「でも、姉さん、楓先輩の家に遊びに行きたいって言ってましたよ。

楓先輩の家って結構近いですよね。それなら、姉さんも心配ないですし」

楓はその言葉に救われ、顔をあげた。優しい笑顔で椿は言った。さっきの冷笑はまるで嘘のようだった。

「でも、変な事はしないで下さいよ?」

「するかぁ!!」

楓が顔を赤くしながら反論した。椿はまた声をあげて笑った。

「そんなにムキにならないで下さいよ。まぁ、姉さんと相談して決めてくださいね」

「そうだね。じゃあ、もう行くね。お昼邪魔してごめん」

「別にいいです。気にしてませんから。じゃあ、また」

楓は椿に手を振って、教室を出ていた。椿も笑顔で見送った。

楓の姿が見えなくなると、椿はくすっと笑った。

「せいぜい浮かれてればいいさ……」


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December / 29 Fri 22:23 ×
僕を呼ぶ君の声。

僕に向ける君の笑顔。

僕に触れる君の指。

僕に―――。

いつからだろう。

君を見ているとイラついてきたのは。




僕達が付き合ったのは、もう一年前に遡(さかのぼ)る。

今思い出すと、あの頃はとても輝いて見える。

確か、二人で前々から楽しみにしていたデートの日。

その日に、急な用事が入ったんだ。二人にとってとても大切な日に。

たいした用事じゃないけど、頼んできた相手が厄介だった。

だから、僕は君に「ごめん」って謝った。ほとんどの人は怒るだろう。

けれど君は、「そう、しかたがないね」っと言って笑った。

最初は良かった。君が僕を思ってくれていると感じられたから。

でも、何回か僕が約束を破っても、僕が他の女と一緒にいても、君はまた笑うんだ。

僕を問い詰めたりも、怒りを露(あらわ)にしない。その度に、僕の何かが音を立て軋(きし)んでいく。

だから、わざと君との約束を破るようになった。

そして、わざと君の目に付くように他の女と一緒にいるところを見せ付けてみる。

それでも、君は何にも聞かないんだね。

また、その綺麗過ぎる笑顔をするんだ。




「ねぇ、僕達別れようよ」

その喫茶店はお洒落で明るい造りになっている。僕の口から出た話題とは似つかない。

紅茶を飲んでいた君の動きが一瞬止まる。

そして、ぎこちない動きでカップを置く。

「どうして……?」

「飽きた。あと、つまらない。それだけ」

僕はそれ以上話すこともないから、席を立った。会計はもう済んでいる。

そのまま、僕は出口にむかう。一度も、君を振り返らずに。

相変わらず店内は、陽気な音楽が流れている。

不意に、後ろに何か気配を感じた。

だから僕は振り返った。そこには、君が立っていた。

君は右手に、カッターを握っていた。

僕はそんな事よりも君の右手首に目が離せなかった。

袖から覗く右手首には、赤い線が数本走っていた。

そういえば、君はいつも袖の長い服を着ていた。

君はカッターを僕の首に刺した。

周りの悲鳴や雑音がうるさい。

崩れ落ちる僕の瞳には、瞳に涙を溜めて、今まで見た事がない怒った顔をした君がいる。

別人のような君は僕を見下ろしている。僕はそんな君を愛しく思って微笑んだ。




初めて、君の人間らしい顔を見れた……。
December / 29 Fri 22:22 ×
人々は神を愛していた。

朝、目が覚めると人々は神への祈りをささげ、食事のときは必ず、神へ感謝の祈りをささげ、床に就くときにも神への祈りをささげた。

そして、祈りをささげ終わると胸に十字を切った。人々は必ず十字架を持っていた。

ある小さな村があった。この村の人々も神を愛し、毎日欠かさず祈りをささげていた。

そんな村に、旅人が来た。

黒いローブを羽織った旅人はとても美しかった。

長い美しい黄金の髪に透けるような白い肌。

背も高く、痩身で男か女か見分けがつかないほど中性的で整った顔をしていた。

もし、天使が姿を現したならば、このような美しい姿をしているのだろうと村人は思った。

旅人はぞっとするほどの赤い瞳をしていた。

「一晩泊まらしてください」

旅人の申し出に、村人は考え込んだ。なぜならば、今、原因不明の疫病が流行っているからだ。

東にある街は、その疫病で壊滅したと聞く。旅人はもしかしたら、疫病にかかっているのかもしれない。

「あんた、どこから来たんだい?」

「東の街から来ました」

村長の問いに旅人は平然と答えた。その答えに、村人がざわめいた。

「ならば、せめて水を一杯下さい。私はそれで立ち去りましょう」

旅人は村に泊まることは無理だと判断したのか、そう申し出た。村人もそれで承諾した。

「自分で水を汲みますから、井戸の場所を教えて下さい」

村長は旅人を井戸まで案内した。井戸は村の一番外れにあった。

村には井戸が一つしかなく、村の水は全てここの井戸から汲んでいた。

「ありがとうございます。私一人で大丈夫ですので」

「あなたに神の祝福を」

村長は旅人のために祈りをささげた。

旅人は丁寧に村長に頭を下げた。村長は来た道を引き返した。

旅人は井戸を覗き込んだ。水がなみなみと溢れている。旅人はそこに唾を吐いた。

井戸の水が一瞬、黒く光った。

「こんにちわ、旅人さん」

旅人は声のした方を振り返った。そこには、少女が一人、笑顔を浮かべ立っていた。

「こんにちわ、お嬢さん。何か用でも?」

旅人もにっこりと微笑んだ。旅人の笑顔は今まで見たどんなものよりも美しかった。

「旅人さんは色んな街に行くから色々知っているのでしょう?」

「一応ね」

旅人は腰を下ろし、少女の目線と自分の目線を合わせた。

少女の瞳は純粋な輝きを放っている。

「神様はどこに住んでいるのか、わかる?」

少女のあどけない質問に、旅人は笑いそうになった。

「神様は人間よりも高いところにいて、いつも人間を見下ろしているんだよ」

「神様に願い事をすれば叶うのかな?」

「神様に選ばれた人間の願い事しか叶えないよ」

「私もお願いすれば叶えてくれるかな?」

旅人は沈黙し、俯いた。

さっきまで優しく答えてくれた旅人が急に黙り込むので少女は不安になった。

「どうしたの、旅人さん?」

旅人は立ち上がり、右手で少女の首に触れた。びくっと体を震わす少女。

旅人は微笑んだ。とても優しく、残酷な笑みだった。

「無理だよ。だって君はここで終わるんだから」

言い終わると同時に、旅人は少女の首を力強く掴んだ。

少女は悲鳴を上げる間もなく、首の骨が折れた。

旅人は少女を地面に無造作に捨てた。

そして、村を出た。笑いながら。





数日後、村は疫病で壊滅した。
December / 29 Fri 22:21 ×

「アンタナンカキライダヨ」


あなたが言った言葉で全てが終わった。

どうしてこんな事になったのだろう。

一時間前は、あんなに仲良しだったのに。

何がいけなかったのだろう。

あなたは最初から私を友達だと思っていなかったの?

そうなの?表向きは"友達"だったの?

本当は私が嫌いだったの?

何度考えても私の思考は先に進まない。

私達は仲が良かった。学校の昼休みに一緒によくご飯食べたりした。

あなたは私よりも頭が良くて、綺麗で私の憧れの存在だった。

私はあなたが大好きで、あなたも私を好きでいてくれてると思った。

だからこれからも、ずっと友達だと思っていた。

あなたに会える日はとても楽しかったんだよ。

私が甘かったのかな。人の心なんて見えないよね。

勝手に友達だと思い込んでいたのかな。

私のこと嫌いだったんだね。

吐き気がする程嫌いで、堪えていたんだね。

じゃあ、どうしてあなたは今泣いているんだろう。

「私とアンタはどこが違うの?私はアンタより頭がいいのに、どうして皆アンタばっか見るの!?」

あなたは泣きながら私の首をしめる。

そういえば、あなたはいつも一人で寂しそうだった。

私はあなたに同情していたのかもしれない。

余計なお世話だったのかな。あなたが寂しくないようにって一緒にいたのは。

可哀想に。私が逆に追い詰めてしまったんだね。

大丈夫だよ。

私は最後まであなたを裏切らないよ。

あなたの瞳から涙が零れた。

December / 29 Fri 22:19 ×
今日はとても静かだ。

私は静かな日が好きだ。

二歳の娘が私の元に微笑みながら、抱っこしてとせがむ。

愛らしい娘に私の顔もつい緩む。

私には二人娘がいる。

九歳の長女と二歳のこの子。

九歳の子は、前の旦那との子だ。だから、この子と年が離れている。

はっきり言うと、私は長女が嫌いだ。

長女は外見も前の旦那に似ているし、性格も似ている。

常に何か喋っている子で、とてもうるさい。

私たちの会話によく割り込んでくる。

大人が真面目な話をしている時、割り込んでくるのだ。

迷惑この上ない。長女は場の空気が読めない子だ。

何よりこの子は、頭が悪いのかどうかわからないのだが、言う事を聞かないのだ。

私がどんなに言っても、どんなに殴っても言う事を聞かない。

長女は人を怒らせることにかけては天才だ。

長女と次女が一緒にいると、必ず、長女は次女を泣かす。

注意しても直らないのだ。

ゆえに毎日が子供の泣き声と長女の馬鹿みたいな笑いが響いていた。

こんな事になるなら最初っから長女を引き取らなければよかった。

こんな可愛くもない前の旦那に似た頭の悪い子なんていらなかった。

子持ちで結婚するのがどんなに大変だった事か…全て長女のせいだ。

私は、そう思う心をひた隠しに生活していた。

「ママ、お姉ちゃんは?」

この子が私に抱かれながら、そう聞いてきた。

私はにこりと微笑んだ。

愛しい私の娘。この子以外いらない。

「お姉ちゃんなんていないわよ」

この子は不思議そうな顔をしたが、「そうなのー?」と言った。

まったくもって、長女は最後の最後まで手間をかけさせる子だ。

ゴミ箱から、人間の右足が出ていた。
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