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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 08:42 ×
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December / 29 Fri 22:22 ×
人々は神を愛していた。

朝、目が覚めると人々は神への祈りをささげ、食事のときは必ず、神へ感謝の祈りをささげ、床に就くときにも神への祈りをささげた。

そして、祈りをささげ終わると胸に十字を切った。人々は必ず十字架を持っていた。

ある小さな村があった。この村の人々も神を愛し、毎日欠かさず祈りをささげていた。

そんな村に、旅人が来た。

黒いローブを羽織った旅人はとても美しかった。

長い美しい黄金の髪に透けるような白い肌。

背も高く、痩身で男か女か見分けがつかないほど中性的で整った顔をしていた。

もし、天使が姿を現したならば、このような美しい姿をしているのだろうと村人は思った。

旅人はぞっとするほどの赤い瞳をしていた。

「一晩泊まらしてください」

旅人の申し出に、村人は考え込んだ。なぜならば、今、原因不明の疫病が流行っているからだ。

東にある街は、その疫病で壊滅したと聞く。旅人はもしかしたら、疫病にかかっているのかもしれない。

「あんた、どこから来たんだい?」

「東の街から来ました」

村長の問いに旅人は平然と答えた。その答えに、村人がざわめいた。

「ならば、せめて水を一杯下さい。私はそれで立ち去りましょう」

旅人は村に泊まることは無理だと判断したのか、そう申し出た。村人もそれで承諾した。

「自分で水を汲みますから、井戸の場所を教えて下さい」

村長は旅人を井戸まで案内した。井戸は村の一番外れにあった。

村には井戸が一つしかなく、村の水は全てここの井戸から汲んでいた。

「ありがとうございます。私一人で大丈夫ですので」

「あなたに神の祝福を」

村長は旅人のために祈りをささげた。

旅人は丁寧に村長に頭を下げた。村長は来た道を引き返した。

旅人は井戸を覗き込んだ。水がなみなみと溢れている。旅人はそこに唾を吐いた。

井戸の水が一瞬、黒く光った。

「こんにちわ、旅人さん」

旅人は声のした方を振り返った。そこには、少女が一人、笑顔を浮かべ立っていた。

「こんにちわ、お嬢さん。何か用でも?」

旅人もにっこりと微笑んだ。旅人の笑顔は今まで見たどんなものよりも美しかった。

「旅人さんは色んな街に行くから色々知っているのでしょう?」

「一応ね」

旅人は腰を下ろし、少女の目線と自分の目線を合わせた。

少女の瞳は純粋な輝きを放っている。

「神様はどこに住んでいるのか、わかる?」

少女のあどけない質問に、旅人は笑いそうになった。

「神様は人間よりも高いところにいて、いつも人間を見下ろしているんだよ」

「神様に願い事をすれば叶うのかな?」

「神様に選ばれた人間の願い事しか叶えないよ」

「私もお願いすれば叶えてくれるかな?」

旅人は沈黙し、俯いた。

さっきまで優しく答えてくれた旅人が急に黙り込むので少女は不安になった。

「どうしたの、旅人さん?」

旅人は立ち上がり、右手で少女の首に触れた。びくっと体を震わす少女。

旅人は微笑んだ。とても優しく、残酷な笑みだった。

「無理だよ。だって君はここで終わるんだから」

言い終わると同時に、旅人は少女の首を力強く掴んだ。

少女は悲鳴を上げる間もなく、首の骨が折れた。

旅人は少女を地面に無造作に捨てた。

そして、村を出た。笑いながら。





数日後、村は疫病で壊滅した。
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