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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
May / 04 Sat 03:49 ×
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June / 26 Thu 16:09 ×
はぁはぁはぁ
自分の息づかいがうるさい。
呼吸が乱れ、吐き出される息は荒い。
なんて不愉快な音なのだろう。
はぁはぁはぁ
額に背中に汗が滴り落ちる。
服が水気を帯びて肌にまとわりつく不愉快な感触。
自分はそれでも止めない。
はぁはぁはぁ
自分は何度も何度も彼女の足の関節を石で砕く。
手に伝わる肉と骨を砕く感触、耳に残る嫌な音。
何もかも不愉快だ。
はぁはぁはぁ
絶対に逃がさない。
これ以上僕から離れないで欲しい。
そう思い、手に力を込めて、君の足の関節を潰す。
はぁはぁはぁ
足が潰れた。
膝を壊したし、皮一枚で繋がってるような状態だ。
次は手だ。
はぁはぁはぁ
僕は君の両腕の関節を潰す。
力を込めて何度も何度も潰す。
動かなくなればいいと何度も呟きながら。
はぁはぁはぁ
ずっとずっとそばにいて欲しい。
お願いだから、僕から離れないで欲しい。
虚ろな君の瞳が僕を映す。
はぁはぁはぁ
君は微かに息をしている。
痛みで意識が朦朧としているようだ。
愛しい顔が最後。
はぁはぁはぁ
君の目を見つめた。
何か言いたげな虚ろな瞳、微かに開いた口。
その瞳に僕以外を映さないで欲しい。
はぁはぁはぁ
だから、僕は腕を振り下ろした。
彼女の瞳をまっすぐ見つめながら。
嫌な感触に美しいものを壊す罪悪感。
肉がひしゃげる、血が飛ぶ、君の顔が潰れる感触。
気持ち悪い。
吐きそうだ。



全てが終わって君をみる。

変わり果てた君を見て僕は安心していた。

君は僕の物だ。

籠の中の鳥のように、ずっとずっと僕がそばにいてあげる。

誰にも君を触れさせない。
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April / 08 Mon 01:34 ×
記憶っていうのは、いつも残酷なものだ。
不意に目に入るものに君の姿が浮かび、僕の心臓はとまりかける。
僕は君に声をかけようとする。
けれど、それは僕の幻で、君は跡形もなく消える。
その度、僕の心に何とも言えない虚しさと哀しさでいっぱいになる。
その感情をなくすために、僕は歩く。
 
どこまでも、どこまでも。
 
今よりも、もっと遠くへ。
 
君がいないところを求めて歩くのだけれど、横に君がいるような気がして、
いや、この景色に君が隠れていて、
今にも僕を驚かそうとしているんじゃないのかと思って、
僕は落ち着かない。
忘れようと思う君を僕は探してしまうんだ。
君はいつだって傍にいたから。
僕の景色に君がいることが当たり前になっていて消えない。
君が僕の中にこびりついて、どれだけ涙を流そうと、消えてくれない。
 
僕は新しい景色に、いない君の姿を見ていた。

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December / 29 Fri 21:48 ×
*この作品では君→お前、僕→私になっています。
【君が泣いた日】とリンクしてます。


私は常に悠然と雄々しく振舞ってきた。

人は皆私に気高さと強さと賢さを求めてきたのだから。

生まれついての容姿も並み以上で、そのせいもあり、人は私に色々求めたのだろう。

この若さと女の身ながら、私は一国の主になった。

一国の主になると、より人々は私に【完璧】と言うものを求めた。

私は己を演じ続けるしかなかった。

周りにいる人間は皆、浅ましく汚い人間どもだった。

この程度で私の寵愛を授かろうだなんて片腹痛い。

家臣達のほとんどが汚い者どもだったが、たった一人だけ純粋な奴がいた。

身分は低く私に会うたび、深々と頭を下げ、私を敬愛の眼差しで見ている。

それが、お前との出会いだったな。

お前を私の執事にした。

やはりお前は純粋で無垢だった。意外にも優秀で私は驚いたものだ。

そんなお前に何度、私は癒されただろうか。

けれど、お前は私を【完璧】だと思い、私を敬愛している。

私は時々、お前の前で素顔を出しそうで怖かった。

お前が求めているものは私ではなく【演じている私】だと言うことを私は理解している。

あの日、私は前王―――父に呼ばれた。

父は私に皮肉と冷たい言葉を投げつけた。私は父に認められると思っていた。

しかし、父は私を認めては下さらなかった。

思いの他、父の言葉は私の心深くに突き刺さったようだ。

私は家臣達に「決して入ってくるな」と命じ、一人部屋に篭った。

部屋の明かりを点けず、私は窓を覗いた。三日月が顔を覗かせていた。

今、この場だけは素顔の私でいられる。

私は一人、声を押し殺し泣いた。気を抜くと声が出そうだった。

いつから私は泣けなくなったのだろう。

泣く事を常に私は我慢してきた。

一国の主にふさわしい人間になるように、父に認められるようにと私は己を演じ続けた。

けれど、父は、父上は私を認めてはくださらなかった。

不意に微かな物音がした。私は反射的に涙を袖で拭い、扉に目をやった。

微かに開いた扉。まさか、誰かに見られたのだろうか。

私は走って扉を開き、廊下を見渡した。

長い廊下に走る人影―――あの後姿。見覚えがある。お前か。お前だったのだな。

おおかた、心配で私の様子を隠れて見たのだろう。

私が泣いているのを見、逃げたのか。

お前にだけは心配をかけたくはなかった。

私の泣く姿を見、お前は不安になってしまったのだろう?

私の素顔を見、民が、お前が不安になってしまう。

すまなかった。私はもう二度と素顔を見せないよ。

この夜に誓おう。私は二度と素顔を見せないと。

愛しいお前が不安になるのなら素顔を永遠に隠そう。

ただ、今だけは泣かせてくれ。

もう二度と見せる事のない素顔を今夜だけださせておくれ。


あの夜から、何故お前は時々悲しそうな顔で私を見る?

あの夜、お前は私の素顔を見て不安に思ったのだろう?

あの夜、確かにお前は不安になっていた。
December / 29 Fri 21:46 ×
この作品では【君貴方、僕私】になっています。
【あの夜確かに君は】にリンクしています。

貴方はいつも気高く賢く強く美しい方。

己に純潔な貴方を私は敬っているのです。

私のような人間は貴方の傍にはいてはいけない下賎な存在。

けれど、貴方に対する忠誠心は誰にも劣りません。

ただ貴方を遠くから見れるだけで私は幸せなのです。

貴方の為に働くことが出来て私は幸せなのです。

貴方に名を呼ばれた時、私は喜びのあまりに倒れそうになりました。

貴方はそんな私を貴方の隣にいさせてくださる。

私は夢を見ているのでしょうか。

貴方が隣にいること自体今でも信じられないのです。

貴方に書類を渡す時、私の手が震えているのを貴方は気づいているのでしょうか。

貴方の近くにいるだけで私は幸せなのです。

美しい貴方の仕草や言葉一つで私は翻弄されるのです。

不意に貴方が見せてくれる笑顔に私は嬉しく感じます。

貴方が私にだけ見せてくれる貴方の笑顔。

それが私の密かな自慢なのです。

私はもっと色々な貴方を見たいと思いました。

それは私の我が侭でしょうか。

貴方の傍で仕え、私はつくづく思います。

やはり貴方は気高く賢く強く美しい方でした。

あの日、貴方の様子をおかしく思いました。

無表情だが、何かに耐えているような辛そうな貴方の顔。

「決して入ってくるな」

貴方はそう言い部屋に篭りました。

貴方の言葉は絶対。破る者などいません。

しかし、私は貴方の事が心配で心配で……貴方の言いつけを破り、そっと部屋を覗きに行きました。

貴方に対する罪悪感が胸に込みあがります。

部屋を覗くと貴方は窓辺に立っていました。

細い肩を震わし、声を押し殺して貴方は泣いていました。

常に悠然として雄々しい貴方の震えてる肩は別の人のように思えました。

私は何故だか怖くなって、その場から走って逃げました。

それは見てはいけないものを見てしまったような感覚。

もしあの時、私に勇気があったのなら、

貴方に「何故、泣いているのですか?」と聞く事ができたのでしょうか。

貴方をこの腕で抱きしめる事ができたのでしょうか。

気高く愛しい貴方を癒す事ができたのでしょうか。

私は貴方の苦しみにその時気づきました。

貴方は全て自分の中に押し込めて、人の望む姿を演じていました。

愚かな私達はそんな事に気づかず、それが貴方の姿だと思っていました。

あの日から貴方は前よりも本当の姿を押し殺すようになりました。

あの日から貴方は変わってしまいました。

私にだけに見せてくれた、


あの柔らかな笑顔を貴方は二度と浮かべる事はありませんでした―――
December / 29 Fri 21:44 ×
君が一体何を求めているのか僕にはわからない。

人に何かを求める行為自体、無駄だと思う。

その人が君の望み通りのものを与えてくれるとは限らない。

君も努力した方が良いよ。

人に頼る前に自分の力でなんとかしなよ。

僕に何かを求めても無駄だよ。

僕は何も持っていないんだから。

だから、ごめんね。

僕は君を救えない。


そう言って、僕は君の手を振り払った。

君の手は最後まで僕にすがるように伸びていた。
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