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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 07:00 ×
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December / 29 Fri 22:23 ×
僕を呼ぶ君の声。

僕に向ける君の笑顔。

僕に触れる君の指。

僕に―――。

いつからだろう。

君を見ているとイラついてきたのは。




僕達が付き合ったのは、もう一年前に遡(さかのぼ)る。

今思い出すと、あの頃はとても輝いて見える。

確か、二人で前々から楽しみにしていたデートの日。

その日に、急な用事が入ったんだ。二人にとってとても大切な日に。

たいした用事じゃないけど、頼んできた相手が厄介だった。

だから、僕は君に「ごめん」って謝った。ほとんどの人は怒るだろう。

けれど君は、「そう、しかたがないね」っと言って笑った。

最初は良かった。君が僕を思ってくれていると感じられたから。

でも、何回か僕が約束を破っても、僕が他の女と一緒にいても、君はまた笑うんだ。

僕を問い詰めたりも、怒りを露(あらわ)にしない。その度に、僕の何かが音を立て軋(きし)んでいく。

だから、わざと君との約束を破るようになった。

そして、わざと君の目に付くように他の女と一緒にいるところを見せ付けてみる。

それでも、君は何にも聞かないんだね。

また、その綺麗過ぎる笑顔をするんだ。




「ねぇ、僕達別れようよ」

その喫茶店はお洒落で明るい造りになっている。僕の口から出た話題とは似つかない。

紅茶を飲んでいた君の動きが一瞬止まる。

そして、ぎこちない動きでカップを置く。

「どうして……?」

「飽きた。あと、つまらない。それだけ」

僕はそれ以上話すこともないから、席を立った。会計はもう済んでいる。

そのまま、僕は出口にむかう。一度も、君を振り返らずに。

相変わらず店内は、陽気な音楽が流れている。

不意に、後ろに何か気配を感じた。

だから僕は振り返った。そこには、君が立っていた。

君は右手に、カッターを握っていた。

僕はそんな事よりも君の右手首に目が離せなかった。

袖から覗く右手首には、赤い線が数本走っていた。

そういえば、君はいつも袖の長い服を着ていた。

君はカッターを僕の首に刺した。

周りの悲鳴や雑音がうるさい。

崩れ落ちる僕の瞳には、瞳に涙を溜めて、今まで見た事がない怒った顔をした君がいる。

別人のような君は僕を見下ろしている。僕はそんな君を愛しく思って微笑んだ。




初めて、君の人間らしい顔を見れた……。
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