この話は「わ か れ」とリンクしています。
そちらの方も読めば、楽しめると思います。
私を見つめる貴方の瞳。
私をだく貴方の腕。
私に触れる貴方の唇。
私に―――。
いつからだろう。
貴方の気持ちがわからなくなったのは。
貴方と付き合ったのは一年前。忘れるはずがない。
私が思いを打ち上げたのだから。
貴方は物静かで、優しい人。皆に好かれていた。
だから、私の思いは叶わないと思っていた。
貴方が笑顔で答えてくれたとき、私は嬉しさと驚きのあまり倒れると思っていた。
嘘じゃない、本当に。
確か、二人でデートの約束をした日。貴方と私が付き合った日。
私はとても楽しみにしていた。
けれど、その日、貴方は私に「ごめん」っと言った。
だから、私は笑って「そう、しかたがないね」って言った。
貴方が好きだから、貴方の重荷にはなりたくなかった。
他の人みたいに烈火の如く怒って、貴方を困らせたくなかった。
ただ、それだけなの。
貴方は私以外の女の人と過ごす時間が長くなった。
貴方と一緒にいる時間は減っていった。
私は貴方に何も聞かなかった。
貴方が私を裏切るはずがないと思っていたから。
貴方は優しい人だから。
私は貴方を愛し、信じていた。でも、辛かった。
耐えきれそうにないと、私は自分の手首を切った。
切って、流れる血と一緒に貴方を疑う自分を流した。
ドロドロした感情も何もかも―――。
だから、私は笑っていられた。貴方に心配させない為。
ただ、貴方の気持ちがわからない。
「ねぇ、僕達別れようよ」
その喫茶店はお洒落で明るい造りになっている。私のお気に入りのお店。
私は紅茶を飲んでいた動きを止めた。貴方の言葉が頭の中で回る。
なるべく平静を保つように心がけ、カップを置く。
「どうして……?」
かろうじて、それだけ言えた。声が震えていた。
「飽きた。あと、つまらない。それだけ」
貴方はそう言うと、席を立って行ってしまう。
「待って!」
けれど、私の言葉は口の中に残った。貴方をひき止める為に伸ばした手もかわされた。
どうして、こんな事になってしまったのだろう。
ただ、貴方を愛していただけなのに。
そのまま、別の人の所へ行くの?
ずっと耐えてきたのに。もう耐えられない。
私はバッグから、カッターを取り出した。
手首を切ってから、いつも肌身離さず持っていたカッター。
私は貴方の後を追った。
貴方が振り向いた。私はカッターを貴方の首に刺した。
誰かのものになるならば、いっそこの手で……。
私はどんな顔をしていたのだろう。
貴方が愛しそうな顔で私を見つめ、崩れ落ちていく。
あぁ、貴方は私を愛してくれていたのね。嬉しい。
私は自分の首にカッターを当てた。
周りの悲鳴が響く。
私もすぐ後追うわ。