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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
May / 04 Sat 14:20 ×
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December / 29 Fri 22:30 ×

その日、楓はそわそわして落ち着かなかった。

その日は日曜日で、楓の家に雫がやってくる日だった。

楓は一人暮らしをしていた。父が経営する高級マンションの一部屋を借りて住んでいるのだ。

セキュリティは万全で、交通の便もよく、ホテル並みに綺麗なので人気の高いマンションである。しかし、その分、家賃は高い。

けれど、楓の場合は家賃はかからず、親の仕送りで生活している。高校生にしては贅沢な生活だ。

楓は時計を見た。針はもう少しで十五時をさすところであった。

「そろそろ、雫が来る。迎いに行こう!」

力強く言い、自分の頬をパシッと叩いた。玄関で靴を履き、外に出る。

玄関は自動で鍵がかかる仕組みになっていた。開ける時は、上についているカメラに顔を向けるだけで良いのだ。

眼の網膜が鍵の役割を果たしているので、カメラにあらかじめ登録されている網膜なら扉が開く仕組みである。

楓はエレベーターに乗り、一階に下りた。一階のホームはとても綺麗で、まるでホテルのようだ。

そこには受付があり、マンションに入るには、まずここを通さなくては入れないのだ。

警備員もちゃんといて、二十四時間、住人の安全を守っている。

受付の方を見ると、そこには雫の姿があった。

「雫!」

雫は楓の方を振り返った。一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。

「楓君」

楓はすぐ雫に駆け寄り、受付に話を通した。楓が出てきたので、受付の方も驚いているのか慌てて、愛想笑いをする。

楓はそんなことは、お構いなしに雫の手を引いてエレベーターに乗った。

「楓君のマンション、綺麗だね」

「父さんの話によると、一応、ホテル並みに綺麗な造りにしたみたいなんだよ」

雫はエレベーターの中を見渡した。エレベーターの中でさえ、凝っている。楓は雫に気付かれないように雫を見た。

白いフリルのブラウスに赤いミニスカートを穿(は)いている。髪もいつもはおろしているのを、上にあげていた。

雫は何を着ても、可愛いと楓は思った。

不意に、楓は雫と二人っきりだという事に今更ながら気づいた。

楓は途端にその事を思い知らされ、緊張してきた。手に汗が滲む。

「楓君。着いたみたい」

雫はそんな楓をよそに、にこっと微笑んだ。

そして、エレベーターから降りた。楓はギクシャクしながら、自分の部屋に案内した。

カメラに顔を向け、扉を開ける。雫は感心しながら言った。

「セキュリティ完璧だね」

雫は靴を丁寧に脱ぎ、上がった。楓も後から続く。

「楓君の部屋はどこ?」

「すぐ右の扉だよ、散らかってるけど、どうぞ」

楓は扉を開いて、雫に中に入るよう促した。部屋は青で統一されていて、綺麗だった。

真ん中に丸型の小さなテーブルがある。

「楓君の部屋綺麗。小さい頃から変わってないね」

「そうかな?適当に座ってて。今、お菓子とか持ってくるから」

「いいよ、そんなの!気を使わなくて良いから」

「いいから、雫は座っていて。ね?」

楓がにっこりと微笑むと、雫も了承したようだ。そして、部屋の真ん中に腰を下ろす。

楓はすぐリビングに行き、あらかじめ用意してあった紅茶とクッキーを運ぶ。

雫の隣に腰を下ろし、紅茶をテーブルに置いた。そして、紅茶をティーカップに注ぐ。

「雫、紅茶好きだよね。これで飲んでみて」

「ありがとう、良い香りね」

ティーカップを受け取り、香りをかぐ。雫の笑みを見て、楓は心底嬉しかった。

「何にも無いけど、ゆっくりしていってね」

その時、雫の携帯が鳴った。雫は慌てて、ティーカップを戻しバックから携帯を取り出す。

着信画面には【椿】と表示されていた。その途端、雫の顔色が変わったのを楓は見逃さなかった。

「ごめんね、楓君。ちょっと待ってて……もしもし、何……?そう、わかった。大丈夫。はい。じゃあね」

電話切った雫の顔には、安堵の色が浮かんでいる。楓は心配になり、いてもいたってもいられなかった。

「誰から?椿?」

「ええ、椿から。帰り迎いに来るって」

雫は微笑んだ。その笑みは痛々しくて、見ているこっちも辛くなった。

「雫、何があったの?話してみてよ」

楓の瞳は真剣だった。雫もその瞳を見て、楓が心配してくれている事はすぐ解った。

不意に雫の瞳から、涙が零れ落ちた。

「雫!どうしたの!?無理言ってゴメンネ。何も話さなくていいから」

「違う……そうじゃないの……私、楓君に話したい事があったの……」

雫は涙を拭うと、真っ直ぐ楓を見つめた。その瞳は今まで、見た事がないほど鋭く光っている。

「椿を止めて欲しいの」

「どういうこと?」

楓は意外な告白に、驚きながらも冷静さを保つ。雫は目を伏せ、静かに淡々と言った。

「私はあの子が―――椿が怖い。あの子は一生私を放さないつもりなの。だから」

雫は言葉を止め、楓を見た。真っ直ぐ、覚悟を決めた瞳。

楓はその瞳に圧倒されながらも、雫のためなら、どんな事でもしようと決めていた。

「何、雫?雫の為なら、何でもするよ。だから、言ってみて」

雫は、はっきり聞こえるように言った。

「―――椿を殺してくれる?」


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