「そういえば、昨日面白い事があったんだよ」
そう言って、昨日の出来事をあなたは話し出す。
私はいつもの様に微笑みながら頷き、話を聞く。
あなたの話はとても面白い。私はあなたの話を聞くのが好きなの。
あなたの傍にいるだけで私はとても楽しいのよ。
あなたは私の事をどう思っているのかしら?
無口な女?聞き上手な女?私にはわからないわ。
けれど、あなたが私の事を好きなのは私でもわかるわ。
あなたが無邪気に笑顔を私に向けていると、とても罪悪感を感じるのよ。
私はね、とても汚くて醜い女なの。
あなたは「そんなことはない」って否定すると思うけど。
本当はあなたの傍には、いてはいけない存在なの。
あなたはそんな私に気づいていないのでしょう。
まぁ、私が演技上手のせいなのかもしれないけれど。
あなたの瞳と違って、私の瞳は濁っているの。
それはもう死んだ魚のような。
あなたと私は生きる世界が違かったせいかもしれないわね。
あなたは美しいものばかり見てきて、汚いものは隠されながら生きてきた。
私は美しいものと汚いものを同じぐらい見て生きてきたわ。
あなたのように瞳が輝いていたのは、何時の事だったかしら?
遠い昔のように思える。
私は、純粋な瞳を私に向け、色々話してくれるあなたが好きよ。
あなたは自分の矛盾にさえ気づいていない馬鹿な人だけどね。
あなたは本当に馬鹿な人。愚かな人。
矛盾に気づかず、無知で純粋なあなた。私は心の奥であなたを嘲笑っているの。
あなたの事を馬鹿だと思いながらね。
けれど純粋なあなたは何も気づかず私に微笑みかけるの。
私はあなたの事が好きよ。馬鹿で無知で純粋なあなたが。
これからも私はあなたの傍にいたい。
あなたの話を色々聞きたいわ。
「それでどうなったの?」
「うん、ここでアイツがーーー」
あなたは嬉々として、話を続ける。私の笑顔を純粋だと思いながら。
いつかあなたの瞳も濁るのだろうか。
もし濁るなら、私の目の前で濁って欲しいわ。
一体どのように、この輝きがなくなるのか見てみたい。
けれど、もう二度と今のあなたに会えないと思うと私は寂しくなった。