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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
May / 09 Fri 22:20 ×
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December / 29 Fri 21:52 ×
四六時中、一人の人間の事を考えてしまう事を『恋』と言うのでしょうか?

僕は友達に自分の気持ちを打ち上げました。

「一日中、あの人の事ばかり考えてしまうんだ」

友達は驚きました。そして、僕に真顔で言いました。

「それは『恋』だよ。その人の事を考えると胸が苦しくなったりするんだろ?」

僕は小さく頷きました。

あの人の事を考えると胸が苦しくて、僕は毎日辛い思いをしています。

友達は僕の告白が嬉しかったのか、僕の『恋』を応援すると言いました。

あぁ、そうか、これが『恋』なのですね。

一人の人間の事を考え、狂ってしまいそうになる思いを。

友達は僕に言いました。

「『恋』は先手必勝」

だから、僕は人気のない所にあの人―――貴女を呼びました。

貴女は時間通りに来てくれました。

空は真っ赤な夕暮れ時です。

僕は木の陰から、そっと貴女を見ました。

貴女は僕が来ないのを苛立っているようです。

時計と睨めっこしています。

ごめんなさい、恋しい貴女。

僕は恥ずかしがり屋だから、貴女の前には行けません。

僕はそーっと後ろから貴女に近づき、貴女の頭を思いっきり石で殴りました。

突然の事で悲鳴を上げることが出来なかった貴女。

僕は何度も何度も、貴女を石で殴りました。

気がつくと、貴女の美しい顔は血で汚れ醜く変形しています。

僕の手も赤く染まっています。貴女はもう、息をしていませんでした。

僕は荒い呼吸を整えました。

なんて清々しい気持ちなんでしょう。

例えるなら、僕の心は雲ひとつ無い澄み切った青空です。

僕はもう、貴女の事を考えません。

僕はずっと貴女を殺したくて、毎日、辛い思いをしていたのですから。

僕の『恋』はもう終わりました。

明日、友達に伝えようと思います。
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December / 29 Fri 21:29 ×
彼女のことを聞いているんですか?

彼女はとても綺麗な子なんですよ。

真っ白な肌に真っ黒の髪。

恥かしいんですけど、一目惚れしちゃって。

彼女に初めて会ったのは、病院の中でした。

なんで、病院にいたのか覚えてないんですけど、彼女にその時会ったんです。

本当にびっくりしましたね。こんな綺麗な子いるんだ、って。

彼女は入院してました。

何の病気かわかりませんけど、たぶん心の病気だと思うんです。

俺は毎日彼女に会いに行きました。

彼女に会いたくて、会いたくて、彼女は俺が来ても嫌がる素振りをしないで迎えてくれました。

ただ、彼女は一度も笑いませんでした。

一度も微笑んでくれませんでした。

何故でしょう?俺にはわかりません。

彼女はいつも無表情で無口でした。


俺は彼女が無表情だろうと無口だろうと構いませんでした。

俺は彼女を愛してましたから。

俺は彼女といつも一緒にいました。

他愛も無い話を彼女に話しました。

彼女は頷いて俺の話を聞いてくれました。

けれど、彼女と一緒にいればいるほど不安になるんです。

彼女は本当に俺のことを愛してくれているんだろうか?って。

彼女に聞いても彼女は黙って答えてくれません。

俺はある日、見てしまったんです。

彼女が他の男に笑いかけているのを。

その男は医者だったのかもしれません。

けれど、俺にはどうでもいいことです。

俺にとって大切なことは彼女の笑顔です。

予想通り、それは綺麗でした。

ただ、俺は自分の足元が崩れていくのがよくわかったんです。

目の前が真っ暗になったと言うべきでしょうか?

彼女は俺を愛していなかった。

俺にはそう感じたんです。彼女は楽しそうに男と微笑んでました。

今は、もうそんな事気にしてませんよ。

人間って案外強いものなんですね。

そう言えば、どうして彼女が俺の足元に転がっているんですか?

彼女、よく見ると俺の顔に似ている。

何故?

それにここは彼女の病室……いや違う。

俺の病室じゃないか。

どうして、俺の頭は血で塗れているんだ?

そういえば彼女って一体誰だろう?

ここには鏡しかないのに……
December / 29 Fri 21:24 ×

【美しすぎる世界】の続編です。そちらの方を読むと、より面白くなると思います。

クラスメイトが自殺した。

クラスで目立たない影の薄い男子だった。

成績のいい子だったから先生のお気に入りだった。

彼はいつも窓の外を見ていた。

今日は彼の葬式だ。

大人たちが悲しんでいるのに空は眩しいくらい澄み切った青だ。

クラスメイトの女子も泣いている。

彼のことを知らないくせによく泣けるものだ。

きっと泣いて自分は良い人だと思いたいんだろうな。

それにしても彼も馬鹿だ。まだ二十歳にもならずに自殺するなんて。

一体何に絶望していたのだろう?

学級長のありきたりな別れの言葉がやっと終わった。

クラスメイトが順番に彼に線香をあげに行く。

私の番が来る。

彼の顔を見てやろう。

絶望を見、自殺した人間の顔はさぞ醜く歪んでいるんだろうね。

私は線香をあげ、棺に眠っている彼の顔を見た。

私は驚いて声を上げそうになった。

そこには、初めて見る彼の笑顔があった。

美しいと言っていいほど、彼は目を閉じ、安らかに微笑んでいる。

どうして微笑んでいるの?絶望していたんじゃないの?遺書も残さず死んだみたいじゃない。

私は覚えているかぎり、記憶の中の彼を集めた。

そういえば、彼は人と関わりあうのを避けていた。

そして、時々、私たちをひどく冷たい目で見ていた。

まるで汚いものを見るような目つきで。

けれど、彼は校庭の桜が満開に咲いた時、桜を愛しそうに見つめていた。

いや、窓から眺める空も愛しそうに見つめていた。

貴方は人の世界に馴染めなかった。だから、死んだんでしょ?

貴方は純粋すぎた。死んで正解かもしれない。

私達のように、偽善の笑みを浮かべ、甘い言葉を囁き、本心では毒づいて生きていくよりは。

貴方にはそれが見えて、耐えることが出来ず、馴染めなかったから死んだ。

しょうがないよ、それが人間なんだから。慣れてしまえば楽しいものなのにね。

このあと、彼は火葬されるだろう。

彼の肉は焼けて、残るのは白い骨のみ。

その骨さえ、土に埋められ、もう会うことはないだろう。

彼とはこれで最後だ。

さようなら、純粋すぎた貴方。

気がつくと、私の頬には涙が流れていた。

もしかしたら、私は彼に恋をしていたのかもしれない。

彼は静かに微笑んでいる。

December / 29 Fri 21:20 ×

その日、俺は仕事の帰りが遅くなった。

不景気なこのご時世、サラリーマンの残業なんて当たり前でしかたがない。

俺は一人、車を運転し薄暗い帰路に着いた。

疲れが溜まっているので、自然に溜息ばかり出る。

俺はなんとなく、バックミラーを見た。

後頭部座席に女が座っていた。

俺はびっくりして、後ろを振り返った。後頭部座席には誰もいなかった。

疲れがたまって、幻覚を見たのだろう。気を取り直して、前方を向こうとした刹那、

「誰を探しているのかしら?」

助手席にはいつの間にか女が座っていた。俺は驚きのあまりブレーキを踏んだ。

「あらあら、あなた、危ないわよ。ちゃんと運転して」

俺の車はずっと走っていた。誰かが乗り込めるはずもないし、最初から俺一人しか乗っていなかった。

助手席に座っている女は、平然と当たり前のように座っていた。

俺はこの女を知っている。長い黒い髪、上品な仕草。この女が何故ここにいる?

「おおおお前、ゆゆ優貴か?」

「名前覚えていてくれてたのね。嬉しいわ」

俺の助手席に座る優貴が言った。前と変わらず穏やかな声。

「ま、まさか!忘れるわけ……ないだろう……

俺の体は震えていた。冷や汗が背中を通る。

呂律がうまく回らない。それも全て恐怖からくるものだ。

「そう。嬉しいわ……私は一時もあなたの事を忘れた事ないのよ」

優しく優貴が言った言葉はとても冷たく、俺にとって恐ろしいものだった。

「ねぇ、あなた知ってる?」

俺は「何を?」と言いたかったが言えなかった。

言葉がのどに詰まる。

優貴は話続けた。うっすらと微笑んでいるようだった。

「女は情が強い生き物なのよ」

気がつくと、俺の車は走っていた。俺の手には汗で濡れている。

「ゆ、優貴、悪かった。本当に悪いことをした」

「あなた、本当にそう思っているのかしら?裏切った人を一体誰が許すのかしら?

優貴は三年前、死んだ女だ。

優貴は世間知らずのお嬢様で俺を愛した。

でも、俺にとってそれは単なる遊びで、結局、優貴は邪魔になって俺は別れたんだ。

優貴はその後、自殺した。

なぜ、今頃優貴が俺の前に現れるんだ。

「優貴、お願いだ、成仏してくれないか?俺の事忘れてくれ、なっ?」

「あなたは本当自分勝手な人ね……ふふふ、あれだけ酷い事をしといて」

「優貴……お前は俺を殺す気か?」

俺の声は震えていた。わかっていた。優貴は最初から俺を殺す気なんだということを。

死にたくなかった。俺には今、家庭がある。妻もいる。子供もいる。

自殺の原因は俺が原因だとわかっている。けど、俺は生きたい。

「優貴頼む……本当に本当に悪かった」

俺は泣いていた。死にたくなかった。生きたかった。

俺は本当に後悔した。本当に俺は最低な男だ。

人の気持ちを考えもしなかった最低な男だ。

「本当、あなたは自分勝手な人ね……

優貴はそう言うと静かに笑って、消えた。

もしかして優貴は俺のことを許してくれたのだろうか。

気がつくと、俺はもう自宅の前までに来ていた。車を車庫に入れ、俺は車から降りた。

今までの事は全て夢だったのかもしれない。

優貴を自殺に追い込んだ罪悪感が俺に見せた幻かもしれない。

それにしても、どうしてこんなに首が痛いんだろう。

玄関の鍵を開けようとした時、俺は気づいてしまった。

玄関の扉に反射的に写った自分の姿。

そこには俺の首を絞め、笑っている優貴がいた。

「言ったでしょう。女は情が強い生き物なのよ

優貴は一生俺を離さないつもりのようだ。

December / 29 Fri 21:16 ×
祖父の葬式に集まったのは数十人だけ。身内だけの葬式。

生きている頃、祖父は家庭を顧みず、毎日遊んでばかりいるような人間だった。

そして、毎回問題ばかり作っていた。その度我が家は毎回尻拭いをしてきた。

年をとり、祖父は病魔に身体を蝕られ、病院のベッドで寝たきりの状態だった。

いつ死ぬのかわからない状態だった。それでも祖父は三年も生きた。

そして、一昨日の夜死んだ。

父が親戚中に電話を掛けた。

親戚が集まってきて、祖父の葬式について話し合いになった。

その時の親戚の言葉を私は一生忘れないだろう。

皆、口を揃えて言うのだ。

「金がない」と。

結局葬式の費用は全てうちが負担した。総額
100万ほどだろう。

親戚の誰もが金を出さなかった。祖父の弟でさえ、見て見ぬふりしていた。

祖父は財産何一つなかった。


だから全部うちが金を作って用意した。

我が家の家計も祖父の死のせいで苦しくなった。

親戚どもはいかにも悲し気な表情をし、悲しいと口々に言う。

気持ち悪くて反吐が出そうだ。

私は親戚どものくだらない話を一時間も聞いてやった。

そして、火葬所で変わり果てた姿の祖父が出てきた。

骨だけになった祖父を見て父は涙を堪えていた。

祖父の遺骨を皆で拾い、壷に入れた。

私が祖父の遺骨を持つ事になった。白い布に包まれた箱を私が持つ。

そして、祖父の遺骨を誰が引き取るのかと言う話になった。

墓に入れるまで誰の家に置くのかと言う話だ。

親戚どもは知らん振り。

結局父が引き取った。もともと、父は絶対引き取るつもりでいた。

帰りの車の中、母と父が喧嘩した。

祖父の葬式の費用、祖父の遺骨、親戚どもの態度。

祖父の遺骨を何所に置くのだろうか。仏壇など我が家にない。

また我が家が買うのだろうか。

私は祖父の遺骨をこの場で叩き割ってやりたい衝動に駆られた。

何のためにこの人は産まれてきたのだろうか。

生きている時ですら問題ばかり作り、死んだ後もこうも問題を作っておくなんて…。



私が殺した意味がないじゃないか。
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