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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 17:25 ×
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December / 29 Fri 21:24 ×

【美しすぎる世界】の続編です。そちらの方を読むと、より面白くなると思います。

クラスメイトが自殺した。

クラスで目立たない影の薄い男子だった。

成績のいい子だったから先生のお気に入りだった。

彼はいつも窓の外を見ていた。

今日は彼の葬式だ。

大人たちが悲しんでいるのに空は眩しいくらい澄み切った青だ。

クラスメイトの女子も泣いている。

彼のことを知らないくせによく泣けるものだ。

きっと泣いて自分は良い人だと思いたいんだろうな。

それにしても彼も馬鹿だ。まだ二十歳にもならずに自殺するなんて。

一体何に絶望していたのだろう?

学級長のありきたりな別れの言葉がやっと終わった。

クラスメイトが順番に彼に線香をあげに行く。

私の番が来る。

彼の顔を見てやろう。

絶望を見、自殺した人間の顔はさぞ醜く歪んでいるんだろうね。

私は線香をあげ、棺に眠っている彼の顔を見た。

私は驚いて声を上げそうになった。

そこには、初めて見る彼の笑顔があった。

美しいと言っていいほど、彼は目を閉じ、安らかに微笑んでいる。

どうして微笑んでいるの?絶望していたんじゃないの?遺書も残さず死んだみたいじゃない。

私は覚えているかぎり、記憶の中の彼を集めた。

そういえば、彼は人と関わりあうのを避けていた。

そして、時々、私たちをひどく冷たい目で見ていた。

まるで汚いものを見るような目つきで。

けれど、彼は校庭の桜が満開に咲いた時、桜を愛しそうに見つめていた。

いや、窓から眺める空も愛しそうに見つめていた。

貴方は人の世界に馴染めなかった。だから、死んだんでしょ?

貴方は純粋すぎた。死んで正解かもしれない。

私達のように、偽善の笑みを浮かべ、甘い言葉を囁き、本心では毒づいて生きていくよりは。

貴方にはそれが見えて、耐えることが出来ず、馴染めなかったから死んだ。

しょうがないよ、それが人間なんだから。慣れてしまえば楽しいものなのにね。

このあと、彼は火葬されるだろう。

彼の肉は焼けて、残るのは白い骨のみ。

その骨さえ、土に埋められ、もう会うことはないだろう。

彼とはこれで最後だ。

さようなら、純粋すぎた貴方。

気がつくと、私の頬には涙が流れていた。

もしかしたら、私は彼に恋をしていたのかもしれない。

彼は静かに微笑んでいる。

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