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彼女はとても綺麗な子なんですよ。
真っ白な肌に真っ黒の髪。
恥かしいんですけど、一目惚れしちゃって。
彼女に初めて会ったのは、病院の中でした。
なんで、病院にいたのか覚えてないんですけど、彼女にその時会ったんです。
本当にびっくりしましたね。こんな綺麗な子いるんだ、って。
彼女は入院してました。
何の病気かわかりませんけど、たぶん心の病気だと思うんです。
俺は毎日彼女に会いに行きました。
彼女に会いたくて、会いたくて、彼女は俺が来ても嫌がる素振りをしないで迎えてくれました。
ただ、彼女は一度も笑いませんでした。
一度も微笑んでくれませんでした。
何故でしょう?俺にはわかりません。
彼女はいつも無表情で無口でした。
俺は彼女が無表情だろうと無口だろうと構いませんでした。
俺は彼女を愛してましたから。
俺は彼女といつも一緒にいました。
他愛も無い話を彼女に話しました。
彼女は頷いて俺の話を聞いてくれました。
けれど、彼女と一緒にいればいるほど不安になるんです。
彼女は本当に俺のことを愛してくれているんだろうか?って。
彼女に聞いても彼女は黙って答えてくれません。
俺はある日、見てしまったんです。
彼女が他の男に笑いかけているのを。
その男は医者だったのかもしれません。
けれど、俺にはどうでもいいことです。
俺にとって大切なことは彼女の笑顔です。
予想通り、それは綺麗でした。
ただ、俺は自分の足元が崩れていくのがよくわかったんです。
目の前が真っ暗になったと言うべきでしょうか?
彼女は俺を愛していなかった。
俺にはそう感じたんです。彼女は楽しそうに男と微笑んでました。
今は、もうそんな事気にしてませんよ。
人間って案外強いものなんですね。
そう言えば、どうして彼女が俺の足元に転がっているんですか?
彼女、よく見ると俺の顔に似ている。
何故?
それにここは彼女の病室……いや違う。
俺の病室じゃないか。
どうして、俺の頭は血で塗れているんだ?
そういえば彼女って一体誰だろう?
ここには鏡しかないのに……。
【美しすぎる世界】の続編です。そちらの方を読むと、より面白くなると思います。
クラスメイトが自殺した。
クラスで目立たない影の薄い男子だった。
成績のいい子だったから先生のお気に入りだった。
彼はいつも窓の外を見ていた。
今日は彼の葬式だ。
大人たちが悲しんでいるのに空は眩しいくらい澄み切った青だ。
クラスメイトの女子も泣いている。
彼のことを知らないくせによく泣けるものだ。
きっと泣いて自分は良い人だと思いたいんだろうな。
それにしても彼も馬鹿だ。まだ二十歳にもならずに自殺するなんて。
一体何に絶望していたのだろう?
学級長のありきたりな別れの言葉がやっと終わった。
クラスメイトが順番に彼に線香をあげに行く。
私の番が来る。
彼の顔を見てやろう。
絶望を見、自殺した人間の顔はさぞ醜く歪んでいるんだろうね。
私は線香をあげ、棺に眠っている彼の顔を見た。
私は驚いて声を上げそうになった。
そこには、初めて見る彼の笑顔があった。
美しいと言っていいほど、彼は目を閉じ、安らかに微笑んでいる。
どうして微笑んでいるの?絶望していたんじゃないの?遺書も残さず死んだみたいじゃない。
私は覚えているかぎり、記憶の中の彼を集めた。
そういえば、彼は人と関わりあうのを避けていた。
そして、時々、私たちをひどく冷たい目で見ていた。
まるで汚いものを見るような目つきで。
けれど、彼は校庭の桜が満開に咲いた時、桜を愛しそうに見つめていた。
いや、窓から眺める空も愛しそうに見つめていた。
貴方は人の世界に馴染めなかった。だから、死んだんでしょ?
貴方は純粋すぎた。死んで正解かもしれない。
私達のように、偽善の笑みを浮かべ、甘い言葉を囁き、本心では毒づいて生きていくよりは。
貴方にはそれが見えて、耐えることが出来ず、馴染めなかったから死んだ。
しょうがないよ、それが人間なんだから。慣れてしまえば楽しいものなのにね。
このあと、彼は火葬されるだろう。
彼の肉は焼けて、残るのは白い骨のみ。
その骨さえ、土に埋められ、もう会うことはないだろう。
彼とはこれで最後だ。
さようなら、純粋すぎた貴方。
気がつくと、私の頬には涙が流れていた。
もしかしたら、私は彼に恋をしていたのかもしれない。
彼は静かに微笑んでいる。
その日、俺は仕事の帰りが遅くなった。
不景気なこのご時世、サラリーマンの残業なんて当たり前でしかたがない。
俺は一人、車を運転し薄暗い帰路に着いた。
疲れが溜まっているので、自然に溜息ばかり出る。
俺はなんとなく、バックミラーを見た。
後頭部座席に女が座っていた。
俺はびっくりして、後ろを振り返った。後頭部座席には誰もいなかった。
疲れがたまって、幻覚を見たのだろう。気を取り直して、前方を向こうとした刹那、
「誰を探しているのかしら?」
助手席にはいつの間にか女が座っていた。俺は驚きのあまりブレーキを踏んだ。
「あらあら、あなた、危ないわよ。ちゃんと運転して」
俺の車はずっと走っていた。誰かが乗り込めるはずもないし、最初から俺一人しか乗っていなかった。
助手席に座っている女は、平然と当たり前のように座っていた。
俺はこの女を知っている。長い黒い髪、上品な仕草。この女が何故ここにいる?
「おおおお前、ゆゆ優貴か?」
「名前覚えていてくれてたのね。嬉しいわ」
俺の助手席に座る優貴が言った。前と変わらず穏やかな声。
「ま、まさか!忘れるわけ……ないだろう……」
俺の体は震えていた。冷や汗が背中を通る。
呂律がうまく回らない。それも全て恐怖からくるものだ。
「そう。嬉しいわ……私は一時もあなたの事を忘れた事ないのよ」
優しく優貴が言った言葉はとても冷たく、俺にとって恐ろしいものだった。
「ねぇ、あなた知ってる?」
俺は「何を?」と言いたかったが言えなかった。
言葉がのどに詰まる。
優貴は話続けた。うっすらと微笑んでいるようだった。
「女は情が強い生き物なのよ」
気がつくと、俺の車は走っていた。俺の手には汗で濡れている。
「ゆ、優貴、悪かった。本当に悪いことをした」
「あなた、本当にそう思っているのかしら?裏切った人を一体誰が許すのかしら?」
優貴は三年前、死んだ女だ。
優貴は世間知らずのお嬢様で俺を愛した。
でも、俺にとってそれは単なる遊びで、結局、優貴は邪魔になって俺は別れたんだ。
優貴はその後、自殺した。
なぜ、今頃優貴が俺の前に現れるんだ。
「優貴、お願いだ、成仏してくれないか?俺の事忘れてくれ、なっ?」
「あなたは本当自分勝手な人ね……ふふふ、あれだけ酷い事をしといて」
「優貴……お前は俺を殺す気か?」
俺の声は震えていた。わかっていた。優貴は最初から俺を殺す気なんだということを。
死にたくなかった。俺には今、家庭がある。妻もいる。子供もいる。
自殺の原因は俺が原因だとわかっている。けど、俺は生きたい。
「優貴頼む……本当に本当に悪かった」
俺は泣いていた。死にたくなかった。生きたかった。
俺は本当に後悔した。本当に俺は最低な男だ。
人の気持ちを考えもしなかった最低な男だ。
「本当、あなたは自分勝手な人ね……」
優貴はそう言うと静かに笑って、消えた。
もしかして優貴は俺のことを許してくれたのだろうか。
気がつくと、俺はもう自宅の前までに来ていた。車を車庫に入れ、俺は車から降りた。
今までの事は全て夢だったのかもしれない。
優貴を自殺に追い込んだ罪悪感が俺に見せた幻かもしれない。
それにしても、どうしてこんなに首が痛いんだろう。
玄関の鍵を開けようとした時、俺は気づいてしまった。
玄関の扉に反射的に写った自分の姿。
そこには俺の首を絞め、笑っている優貴がいた。
「言ったでしょう。女は情が強い生き物なのよ…」
優貴は一生俺を離さないつもりのようだ。
生きている頃、祖父は家庭を顧みず、毎日遊んでばかりいるような人間だった。
そして、毎回問題ばかり作っていた。その度我が家は毎回尻拭いをしてきた。
年をとり、祖父は病魔に身体を蝕られ、病院のベッドで寝たきりの状態だった。
いつ死ぬのかわからない状態だった。それでも祖父は三年も生きた。
そして、一昨日の夜死んだ。
父が親戚中に電話を掛けた。
親戚が集まってきて、祖父の葬式について話し合いになった。
その時の親戚の言葉を私は一生忘れないだろう。
皆、口を揃えて言うのだ。
「金がない」と。
結局葬式の費用は全てうちが負担した。総額100万ほどだろう。
親戚の誰もが金を出さなかった。祖父の弟でさえ、見て見ぬふりしていた。
祖父は財産何一つなかった。
だから全部うちが金を作って用意した。
我が家の家計も祖父の死のせいで苦しくなった。
親戚どもはいかにも悲し気な表情をし、悲しいと口々に言う。
気持ち悪くて反吐が出そうだ。
私は親戚どものくだらない話を一時間も聞いてやった。
そして、火葬所で変わり果てた姿の祖父が出てきた。
骨だけになった祖父を見て父は涙を堪えていた。
祖父の遺骨を皆で拾い、壷に入れた。
私が祖父の遺骨を持つ事になった。白い布に包まれた箱を私が持つ。
そして、祖父の遺骨を誰が引き取るのかと言う話になった。
墓に入れるまで誰の家に置くのかと言う話だ。
親戚どもは知らん振り。
結局父が引き取った。もともと、父は絶対引き取るつもりでいた。
帰りの車の中、母と父が喧嘩した。
祖父の葬式の費用、祖父の遺骨、親戚どもの態度。
祖父の遺骨を何所に置くのだろうか。仏壇など我が家にない。
また我が家が買うのだろうか。
私は祖父の遺骨をこの場で叩き割ってやりたい衝動に駆られた。
何のためにこの人は産まれてきたのだろうか。
生きている時ですら問題ばかり作り、死んだ後もこうも問題を作っておくなんて…。
私が殺した意味がないじゃないか。
この話は「わ か れ」とリンクしています。
そちらの方も読めば、楽しめると思います。
私を見つめる貴方の瞳。
私をだく貴方の腕。
私に触れる貴方の唇。
私に―――。
いつからだろう。
貴方の気持ちがわからなくなったのは。
貴方と付き合ったのは一年前。忘れるはずがない。
私が思いを打ち上げたのだから。
貴方は物静かで、優しい人。皆に好かれていた。
だから、私の思いは叶わないと思っていた。
貴方が笑顔で答えてくれたとき、私は嬉しさと驚きのあまり倒れると思っていた。
嘘じゃない、本当に。
確か、二人でデートの約束をした日。貴方と私が付き合った日。
私はとても楽しみにしていた。
けれど、その日、貴方は私に「ごめん」っと言った。
だから、私は笑って「そう、しかたがないね」って言った。
貴方が好きだから、貴方の重荷にはなりたくなかった。
他の人みたいに烈火の如く怒って、貴方を困らせたくなかった。
ただ、それだけなの。
貴方は私以外の女の人と過ごす時間が長くなった。
貴方と一緒にいる時間は減っていった。
私は貴方に何も聞かなかった。
貴方が私を裏切るはずがないと思っていたから。
貴方は優しい人だから。
私は貴方を愛し、信じていた。でも、辛かった。
耐えきれそうにないと、私は自分の手首を切った。
切って、流れる血と一緒に貴方を疑う自分を流した。
ドロドロした感情も何もかも―――。
だから、私は笑っていられた。貴方に心配させない為。
ただ、貴方の気持ちがわからない。
「ねぇ、僕達別れようよ」
その喫茶店はお洒落で明るい造りになっている。私のお気に入りのお店。
私は紅茶を飲んでいた動きを止めた。貴方の言葉が頭の中で回る。
なるべく平静を保つように心がけ、カップを置く。
「どうして……?」
かろうじて、それだけ言えた。声が震えていた。
「飽きた。あと、つまらない。それだけ」
貴方はそう言うと、席を立って行ってしまう。
「待って!」
けれど、私の言葉は口の中に残った。貴方をひき止める為に伸ばした手もかわされた。
どうして、こんな事になってしまったのだろう。
ただ、貴方を愛していただけなのに。
そのまま、別の人の所へ行くの?
ずっと耐えてきたのに。もう耐えられない。
私はバッグから、カッターを取り出した。
手首を切ってから、いつも肌身離さず持っていたカッター。
私は貴方の後を追った。
貴方が振り向いた。私はカッターを貴方の首に刺した。
誰かのものになるならば、いっそこの手で……。
私はどんな顔をしていたのだろう。
貴方が愛しそうな顔で私を見つめ、崩れ落ちていく。
あぁ、貴方は私を愛してくれていたのね。嬉しい。
私は自分の首にカッターを当てた。
周りの悲鳴が響く。
私もすぐ後追うわ。