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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 21 Mon 00:07 ×
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December / 29 Fri 21:29 ×
彼女のことを聞いているんですか?

彼女はとても綺麗な子なんですよ。

真っ白な肌に真っ黒の髪。

恥かしいんですけど、一目惚れしちゃって。

彼女に初めて会ったのは、病院の中でした。

なんで、病院にいたのか覚えてないんですけど、彼女にその時会ったんです。

本当にびっくりしましたね。こんな綺麗な子いるんだ、って。

彼女は入院してました。

何の病気かわかりませんけど、たぶん心の病気だと思うんです。

俺は毎日彼女に会いに行きました。

彼女に会いたくて、会いたくて、彼女は俺が来ても嫌がる素振りをしないで迎えてくれました。

ただ、彼女は一度も笑いませんでした。

一度も微笑んでくれませんでした。

何故でしょう?俺にはわかりません。

彼女はいつも無表情で無口でした。


俺は彼女が無表情だろうと無口だろうと構いませんでした。

俺は彼女を愛してましたから。

俺は彼女といつも一緒にいました。

他愛も無い話を彼女に話しました。

彼女は頷いて俺の話を聞いてくれました。

けれど、彼女と一緒にいればいるほど不安になるんです。

彼女は本当に俺のことを愛してくれているんだろうか?って。

彼女に聞いても彼女は黙って答えてくれません。

俺はある日、見てしまったんです。

彼女が他の男に笑いかけているのを。

その男は医者だったのかもしれません。

けれど、俺にはどうでもいいことです。

俺にとって大切なことは彼女の笑顔です。

予想通り、それは綺麗でした。

ただ、俺は自分の足元が崩れていくのがよくわかったんです。

目の前が真っ暗になったと言うべきでしょうか?

彼女は俺を愛していなかった。

俺にはそう感じたんです。彼女は楽しそうに男と微笑んでました。

今は、もうそんな事気にしてませんよ。

人間って案外強いものなんですね。

そう言えば、どうして彼女が俺の足元に転がっているんですか?

彼女、よく見ると俺の顔に似ている。

何故?

それにここは彼女の病室……いや違う。

俺の病室じゃないか。

どうして、俺の頭は血で塗れているんだ?

そういえば彼女って一体誰だろう?

ここには鏡しかないのに……
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December / 29 Fri 21:24 ×

【美しすぎる世界】の続編です。そちらの方を読むと、より面白くなると思います。

クラスメイトが自殺した。

クラスで目立たない影の薄い男子だった。

成績のいい子だったから先生のお気に入りだった。

彼はいつも窓の外を見ていた。

今日は彼の葬式だ。

大人たちが悲しんでいるのに空は眩しいくらい澄み切った青だ。

クラスメイトの女子も泣いている。

彼のことを知らないくせによく泣けるものだ。

きっと泣いて自分は良い人だと思いたいんだろうな。

それにしても彼も馬鹿だ。まだ二十歳にもならずに自殺するなんて。

一体何に絶望していたのだろう?

学級長のありきたりな別れの言葉がやっと終わった。

クラスメイトが順番に彼に線香をあげに行く。

私の番が来る。

彼の顔を見てやろう。

絶望を見、自殺した人間の顔はさぞ醜く歪んでいるんだろうね。

私は線香をあげ、棺に眠っている彼の顔を見た。

私は驚いて声を上げそうになった。

そこには、初めて見る彼の笑顔があった。

美しいと言っていいほど、彼は目を閉じ、安らかに微笑んでいる。

どうして微笑んでいるの?絶望していたんじゃないの?遺書も残さず死んだみたいじゃない。

私は覚えているかぎり、記憶の中の彼を集めた。

そういえば、彼は人と関わりあうのを避けていた。

そして、時々、私たちをひどく冷たい目で見ていた。

まるで汚いものを見るような目つきで。

けれど、彼は校庭の桜が満開に咲いた時、桜を愛しそうに見つめていた。

いや、窓から眺める空も愛しそうに見つめていた。

貴方は人の世界に馴染めなかった。だから、死んだんでしょ?

貴方は純粋すぎた。死んで正解かもしれない。

私達のように、偽善の笑みを浮かべ、甘い言葉を囁き、本心では毒づいて生きていくよりは。

貴方にはそれが見えて、耐えることが出来ず、馴染めなかったから死んだ。

しょうがないよ、それが人間なんだから。慣れてしまえば楽しいものなのにね。

このあと、彼は火葬されるだろう。

彼の肉は焼けて、残るのは白い骨のみ。

その骨さえ、土に埋められ、もう会うことはないだろう。

彼とはこれで最後だ。

さようなら、純粋すぎた貴方。

気がつくと、私の頬には涙が流れていた。

もしかしたら、私は彼に恋をしていたのかもしれない。

彼は静かに微笑んでいる。

December / 29 Fri 21:20 ×

その日、俺は仕事の帰りが遅くなった。

不景気なこのご時世、サラリーマンの残業なんて当たり前でしかたがない。

俺は一人、車を運転し薄暗い帰路に着いた。

疲れが溜まっているので、自然に溜息ばかり出る。

俺はなんとなく、バックミラーを見た。

後頭部座席に女が座っていた。

俺はびっくりして、後ろを振り返った。後頭部座席には誰もいなかった。

疲れがたまって、幻覚を見たのだろう。気を取り直して、前方を向こうとした刹那、

「誰を探しているのかしら?」

助手席にはいつの間にか女が座っていた。俺は驚きのあまりブレーキを踏んだ。

「あらあら、あなた、危ないわよ。ちゃんと運転して」

俺の車はずっと走っていた。誰かが乗り込めるはずもないし、最初から俺一人しか乗っていなかった。

助手席に座っている女は、平然と当たり前のように座っていた。

俺はこの女を知っている。長い黒い髪、上品な仕草。この女が何故ここにいる?

「おおおお前、ゆゆ優貴か?」

「名前覚えていてくれてたのね。嬉しいわ」

俺の助手席に座る優貴が言った。前と変わらず穏やかな声。

「ま、まさか!忘れるわけ……ないだろう……

俺の体は震えていた。冷や汗が背中を通る。

呂律がうまく回らない。それも全て恐怖からくるものだ。

「そう。嬉しいわ……私は一時もあなたの事を忘れた事ないのよ」

優しく優貴が言った言葉はとても冷たく、俺にとって恐ろしいものだった。

「ねぇ、あなた知ってる?」

俺は「何を?」と言いたかったが言えなかった。

言葉がのどに詰まる。

優貴は話続けた。うっすらと微笑んでいるようだった。

「女は情が強い生き物なのよ」

気がつくと、俺の車は走っていた。俺の手には汗で濡れている。

「ゆ、優貴、悪かった。本当に悪いことをした」

「あなた、本当にそう思っているのかしら?裏切った人を一体誰が許すのかしら?

優貴は三年前、死んだ女だ。

優貴は世間知らずのお嬢様で俺を愛した。

でも、俺にとってそれは単なる遊びで、結局、優貴は邪魔になって俺は別れたんだ。

優貴はその後、自殺した。

なぜ、今頃優貴が俺の前に現れるんだ。

「優貴、お願いだ、成仏してくれないか?俺の事忘れてくれ、なっ?」

「あなたは本当自分勝手な人ね……ふふふ、あれだけ酷い事をしといて」

「優貴……お前は俺を殺す気か?」

俺の声は震えていた。わかっていた。優貴は最初から俺を殺す気なんだということを。

死にたくなかった。俺には今、家庭がある。妻もいる。子供もいる。

自殺の原因は俺が原因だとわかっている。けど、俺は生きたい。

「優貴頼む……本当に本当に悪かった」

俺は泣いていた。死にたくなかった。生きたかった。

俺は本当に後悔した。本当に俺は最低な男だ。

人の気持ちを考えもしなかった最低な男だ。

「本当、あなたは自分勝手な人ね……

優貴はそう言うと静かに笑って、消えた。

もしかして優貴は俺のことを許してくれたのだろうか。

気がつくと、俺はもう自宅の前までに来ていた。車を車庫に入れ、俺は車から降りた。

今までの事は全て夢だったのかもしれない。

優貴を自殺に追い込んだ罪悪感が俺に見せた幻かもしれない。

それにしても、どうしてこんなに首が痛いんだろう。

玄関の鍵を開けようとした時、俺は気づいてしまった。

玄関の扉に反射的に写った自分の姿。

そこには俺の首を絞め、笑っている優貴がいた。

「言ったでしょう。女は情が強い生き物なのよ

優貴は一生俺を離さないつもりのようだ。

December / 29 Fri 21:16 ×
祖父の葬式に集まったのは数十人だけ。身内だけの葬式。

生きている頃、祖父は家庭を顧みず、毎日遊んでばかりいるような人間だった。

そして、毎回問題ばかり作っていた。その度我が家は毎回尻拭いをしてきた。

年をとり、祖父は病魔に身体を蝕られ、病院のベッドで寝たきりの状態だった。

いつ死ぬのかわからない状態だった。それでも祖父は三年も生きた。

そして、一昨日の夜死んだ。

父が親戚中に電話を掛けた。

親戚が集まってきて、祖父の葬式について話し合いになった。

その時の親戚の言葉を私は一生忘れないだろう。

皆、口を揃えて言うのだ。

「金がない」と。

結局葬式の費用は全てうちが負担した。総額
100万ほどだろう。

親戚の誰もが金を出さなかった。祖父の弟でさえ、見て見ぬふりしていた。

祖父は財産何一つなかった。


だから全部うちが金を作って用意した。

我が家の家計も祖父の死のせいで苦しくなった。

親戚どもはいかにも悲し気な表情をし、悲しいと口々に言う。

気持ち悪くて反吐が出そうだ。

私は親戚どものくだらない話を一時間も聞いてやった。

そして、火葬所で変わり果てた姿の祖父が出てきた。

骨だけになった祖父を見て父は涙を堪えていた。

祖父の遺骨を皆で拾い、壷に入れた。

私が祖父の遺骨を持つ事になった。白い布に包まれた箱を私が持つ。

そして、祖父の遺骨を誰が引き取るのかと言う話になった。

墓に入れるまで誰の家に置くのかと言う話だ。

親戚どもは知らん振り。

結局父が引き取った。もともと、父は絶対引き取るつもりでいた。

帰りの車の中、母と父が喧嘩した。

祖父の葬式の費用、祖父の遺骨、親戚どもの態度。

祖父の遺骨を何所に置くのだろうか。仏壇など我が家にない。

また我が家が買うのだろうか。

私は祖父の遺骨をこの場で叩き割ってやりたい衝動に駆られた。

何のためにこの人は産まれてきたのだろうか。

生きている時ですら問題ばかり作り、死んだ後もこうも問題を作っておくなんて…。



私が殺した意味がないじゃないか。
December / 29 Fri 21:10 ×

この話は「わ か れ」とリンクしています。
そちらの方も読めば、楽しめると思います。

私を見つめる貴方の瞳。

私をだく貴方の腕。

私に触れる貴方の唇。

私に―――。

いつからだろう。

貴方の気持ちがわからなくなったのは。


貴方と付き合ったのは一年前。忘れるはずがない。

私が思いを打ち上げたのだから。

貴方は物静かで、優しい人。皆に好かれていた。

だから、私の思いは叶わないと思っていた。

貴方が笑顔で答えてくれたとき、私は嬉しさと驚きのあまり倒れると思っていた。

嘘じゃない、本当に。

確か、二人でデートの約束をした日。貴方と私が付き合った日。

私はとても楽しみにしていた。

けれど、その日、貴方は私に「ごめん」っと言った。

だから、私は笑って「そう、しかたがないね」って言った。

貴方が好きだから、貴方の重荷にはなりたくなかった。

他の人みたいに烈火の如く怒って、貴方を困らせたくなかった。

ただ、それだけなの。

貴方は私以外の女の人と過ごす時間が長くなった。

貴方と一緒にいる時間は減っていった。

私は貴方に何も聞かなかった。

貴方が私を裏切るはずがないと思っていたから。

貴方は優しい人だから。

私は貴方を愛し、信じていた。でも、辛かった。

耐えきれそうにないと、私は自分の手首を切った。

切って、流れる血と一緒に貴方を疑う自分を流した。

ドロドロした感情も何もかも―――。

だから、私は笑っていられた。貴方に心配させない為。

ただ、貴方の気持ちがわからない。

 

「ねぇ、僕達別れようよ」

その喫茶店はお洒落で明るい造りになっている。私のお気に入りのお店。

私は紅茶を飲んでいた動きを止めた。貴方の言葉が頭の中で回る。

なるべく平静を保つように心がけ、カップを置く。

「どうして……?」

かろうじて、それだけ言えた。声が震えていた。

「飽きた。あと、つまらない。それだけ」

貴方はそう言うと、席を立って行ってしまう。

「待って!」

けれど、私の言葉は口の中に残った。貴方をひき止める為に伸ばした手もかわされた。

どうして、こんな事になってしまったのだろう。

ただ、貴方を愛していただけなのに。

そのまま、別の人の所へ行くの?

ずっと耐えてきたのに。もう耐えられない。

私はバッグから、カッターを取り出した。

手首を切ってから、いつも肌身離さず持っていたカッター。

私は貴方の後を追った。

貴方が振り向いた。私はカッターを貴方の首に刺した。

誰かのものになるならば、いっそこの手で……。

私はどんな顔をしていたのだろう。

貴方が愛しそうな顔で私を見つめ、崩れ落ちていく。

あぁ、貴方は私を愛してくれていたのね。嬉しい。

私は自分の首にカッターを当てた。

周りの悲鳴が響く。

 

私もすぐ後追うわ。

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