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現に今そうだ。
父親が馬鹿だと、苦労する。
特に会計をにぎると最悪だ。
なぜなら、会計の管理ができないからだ。
今まで母に任せていたことを、できるはずがない。
するとすぐ、借金まみれになる。
そして、自分が間違っていると認めたくないので、母の悪口を言う。
現実を見ず、酒に溺れる毎日。
おかげで今は、夫婦別居状態だ。
母は、毎日父の悪口ばかり言う。
そういう母も、馬鹿な人間だと気づかない。
そんな父が悪いならば、なぜ、結婚したのだろう?
騙されたと母は言う。
最初にそういうことに気づかない時点で、母は愚かだ。
だから、その程度の男と結婚したのだ。
きっと、もう少しで家庭は、崩壊するのだろう。
いや、もう崩壊している。
慣れてしまったから、私はそういうことに気づかなかっただけ。
いっそ、跡形もなく、綺麗になくなってしまえばいい。
その方がきっとスッキリする。
家庭があったと言う事実なんて、私は欲しくない。
なくなってしまえばいい。
父も母も家庭も全部なくなってしまえばいい。
もう疲れた。
彼らに悩まされることに。
家庭のしがらみに縛られていることに。
都合のいい時に子供利用する神経は、一体どうなっているのだろう。
そんな家庭なんて、必要ない。
馬鹿な両親なんていらない。
ああ、そうか。
馬鹿な両親の間に生まれた私も、馬鹿なんだな。
だから、こんなことばかり考えているんだ。
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ある青い空の昼下がり。
少女が一人、人気のない公園のベンチに座っていた。
その少女は、とても美しく、どこか艶かしい雰囲気をもっていた。
スーツを着た青年が、少女の元に歩んできた。
「隣に座っても、いいですか?」
「ええ、どうぞ」
少女は微笑んだ。
青年は小さくお辞儀をすると、少女の隣に座った。
身のこなしの美しい、柔和な顔立ちをした青年だった。
「お兄さん、ここから見える館のお話をご存知?」
少女は口元に笑みを浮かべ、ここから見える館を指差した。
その館はとても古く、不気味な館だった。
青年はそれを見つめ、そして首を横に振った。
少女は面白そうに笑った。
「…あの館はね、呪われているの」
「呪い?」
愛らしい少女の口から出た言葉に、青年は驚きを隠せなかった。
青年の反応が面白いのか、少女は面白そうに笑った。
そして少女は、静かに語りだした。
「ずっと、昔。あの館には、ある男が住んでいたの」
その男は両親をなくし、十はなれた妹と二人で住んでいたわ。
男の父は、戦争で戦死し、母は病気で亡くなったの。
男はとても賢く優しく、妹をとても可愛がっていたの。
二人は、とても仲のいい兄妹だった。
けれど、悲劇が起きたの。
それは妹の十二回目の誕生日。
その晩、男は妹の首を絞め、殺したの。
そしてすぐに、ナイフで自分の首を切って自殺したわ。
どうして、男はそんなことしたかって?
それは男が、妹に恋をしていたからよ。
そのことに男は悩んで、気が狂いそうになったのでしょうね。
美しく成長していく妹を愛さずにはいられないことに―――。
どうして、私がこの話を知っているかって?
フフフ…ここら辺に住んでいる人なら、皆知っている話よ。
「それ以来、あの館からは男の幽霊が出るんですって」
少女は語り終えると、目を伏せた。
青年は、しばし館を見つめ、重い口を開いた。
「君は、男の幽霊を見たことある?」
「私?見たことないわ」
少女は意味ありげに微笑んだ。
青年は少女を見た。
絹のような黄金の長い髪。
白く透けるような肌。
人形のように整った愛らしい顔。
大きな瞳は、透き通る青。
愛らしい薄桃色の唇。
小さな身体。
この少女は美しいと青年は、思った。
そして、青年は右手で少女の髪を掴み、匂いを嗅いだ。
青年の突然の行動に少女は、驚き、怯え青年を見た。
「な、何?」
青年はクスリと笑った。
「君はとても綺麗な子だね…髪は綺麗でいい匂いがする」
「お兄さん…?」
青年は左手を伸ばし、怯えている少女の顔に触れた。
右手はしっかりと少女の髪を掴んでいる。
逃げるにも逃げれない少女は、身を縮め、できるだけ青年から離れるようにする。
無駄なことだとわかっていても、少女はそうした。
「肌も白いし、瞳はとても綺麗だ」
青年はうっとりと少女の顔を見ると、笑った。
顔に触れた手は、少女の首へと移動する。
「君の話してくれた話には、間違いがあるよ。
男は妹に恋をしていたわけじゃない。
可愛らしい妹が成長していくことが、許せなかったんだ。
だから、これ以上成長させないために、殺したんだよ」
言い終わるやいなや、青年は少女の首を両手で絞めた。
悲鳴も上げられず、少女は必死に手足をばたつかせ、抵抗したがそれも空しく終わった。
少女が事切れるのを確認すると、青年は愛しそうに少女を抱き上げた。
そして、悲しそうに呟いた。
「皆、幼い時は純粋で無垢で愛らしいのに、成長すると醜くなる…
そんなこと耐えられるはずがない…」
青年は、死体になった少女の頭を撫でた。
愛しそうに何度も、何度も。
青年はベンチに背をむけ、歩き出した。
そして、少女に微笑んだ。
「さぁ、家に帰ろう。永遠に僕と一緒にいよう」
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一週間がたった。
私はすっかり、雨宮君との約束を忘れ、今の生活を満喫してた。
私は放課後、皆には参加せず図書館に向かった。
読みたかった本が今日、入ったはずだ。
放課後は人もいないので、色々と便利だ。
私が本をじっくり見ていると、後ろに人の気配を感じた。
「高橋さん」
それは雨宮君だった。私は驚いて、後ずさった。
毎日暴行を受け、彼の顔は以前の面影がない。
そのため、彼は顔に包帯を巻いている。
前に男子達が無理矢理、彼の包帯をとったことがあるのだ。
その時の彼の顔は、以前の面影はまったくなく、醜く変形していた。
包帯から覗く目が私を責めているようだった。
しかし、私はきっと彼を睨みつけた。
普段彼を殴っているせいか、私は彼より上の存在だと思った。
「一体、何の用よ!?」
「手…約束だよ。頂戴」
雨宮君は、無感情にそう言った。
私は怒りを露にして、声を荒げた。
「何、馬鹿なこと言ってんの!?誰がアンタなんかに手を渡すもんですか!!!」
「約束を破る気?」
雨宮君は、静かにそう言った。
その態度に、私はだんだんと腹が立ってきた。
「私の目の前から消えてよ!!!!この変態!!!!!!!!」
私は、手に持っていた本を彼に投げつけた。
しかし、彼はひょいと避けると、私の右手首を掴んだ。
「君には本当、失望したよ…約束を果たしてよね」
「きゃああああああ!!!!何すんのよ、この変態!!!!!」
私は暴れまくった。
そして、左手で無意識に雨宮君の顔の包帯を掴み、引っ張った。
包帯から露になったのは、暴行を受け、醜く変形した顔ではなかった。
初めて会った時と同じ、端正な美しい顔だった。
私がその事に驚いていると、彼は笑った。
「手は貰うからね…」
不意に、私の視界は黒くなり、そして私の意識はなくなった。
私が目を覚ました時、そこは見慣れたいつもの教室だった。
雨宮君の事は、夢だったのだろうか。
私は身体を起こした。そして、すぐ恐怖に駆られた。
クラスメイトが皆、私を囲んでいるのだ。
ニヤニヤと笑いながら、ホウキを持っている者もいた。
この光景は、いつも雨宮君が皆に暴行される時と一緒である。
「い、いや!!!誰か助けて!!!」
私は叫び、助けを求めた。しかし、誰も助けてくれない。
視界の隅に雨宮君の姿を見つけた。
「雨宮君、助けて!!」
私は彼に手を伸ばし、助けを求めた。
雨宮君は初めて会った時と同じように、端正な顔に笑みを浮かばせてた。
「高橋さん、君からもらった手は大切にするからね」
雨宮君の手には、手首から切断された白い手が二つあった。
彼はそれを愛しそうに頬擦りすると、教室から出て行った。
私は自分の手を見た。
制服の袖から先、何もなかった。
両手ともなくなっていた。
皆が後ろに立って、笑っていた。
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最初は、クラスの女子皆から無視された。
誰一人、私に話しかけてくれない。
目を合わせてもくれない。
まるで私が存在しないかのように、振舞う。
原因は、きっとあれだろう。
些細なことで、リーダー格の子の自信を傷つけてしまった。
私は嫌われた。
その仕打ちとして、クラスの女子皆から無視された。
女子の雰囲気が彼らに伝わり、男子達は皆、知らんふり。
私は特に彼らと親しいわけでもないし、皆、厄介事には関わりたくないものだ。
無視されるのは、それだけで充分精神的に辛い。
ある日学校に来たら、私の上履きがなくなっていた。
クラスメイトの女子が数人、私を見てニヤニヤ笑っている。
悪意に満ちた嫌な笑みだ。
私は靴下のまま、教室に行くことになった。
何も知らない人達の奇異な視線がとても痛い。
クラスに入り、担任がその事に気づいた。
そして、私の上履きは、トイレの中に投げ込まれているのを他のクラスの子が見つけた。
無視だけで、すまなくなった。
彼女達の行動は、どんどんエスカレートしていった。
教科書がなくなるのは当たり前。破かれることも当たり前。
机には酷い言葉が書かれているのも。
下駄箱の中に、ゴミが入っているのも。
いつか教室に入ったら、私の机も椅子もなくなったいるのではないかと、私は怖い。
彼女達は、私の心に突き刺さるような言葉ばかりいい、精神を傷つける。
そんなある日、私のクラスに転校生がやってきた。
男の子だった。
どこか垢抜けていて、笑顔で新しいクラスメイトを見ている。
背が高く、整った顔立ちをしている。
女子たちが一斉にヒソヒソと彼のことを話す。
担任が、転校生の名前を黒板に書いた。
雨宮凛―――凛は笑顔で、元気な声で言った。
「雨宮凛です。宜しくお願いします」
とても透明で綺麗な声だった。
担任は雨宮君に席を教えてあげた。雨宮君の席は私の隣だった。
よりによって私の隣だった。
女子達の嫉妬の眼差しをヒシヒシと感じる。
雨宮君にはわからない。
このクラスがかつて彼がいた学校のように、平穏なクラスではないということを。
きっとこれからも、もっと酷い仕打ちを私は受けるんだろう。
「初めまして。雨宮です。名前は何て言うの?」
雨宮君は席に着くと、私に笑顔で挨拶した。
美少年がすぐ傍にいることに私は緊張し、顔を俯いた。
「雨宮君、高橋さんと話すと陰気臭くなるよ~」
私が口ごもっていると、女子が言った。そして、女子達が笑った。
私は恥ずかしさと辛さで、この場から消えたいと思った。
彼が私の隣でなければ、こんなことにもならなかったのに。
私は担任も恨んだ。
けれど、雨宮君は驚いた表情で女子達を見た。
「どうしてそういう事言うの?そんなこと言っちゃダメだよ」
女子達は気まずそうな顔をして、そして私を睨み、視線をそらした。
雨宮君は少し困った顔をしながら、私を見た。
「えーっと高橋…さんだよね?とにかく気にしないほうがいいよ」
私は久しぶりに、人の温かさに触れた気がした。
お礼を言いたかったが、のどに詰まって言えなかった。
涙が出そうになり、私はずっと俯いていた。
雨宮君は、その人懐っこい性格と整った容姿で、クラスの皆から慕われた。
学校が終わるまで、彼の周りには常に人がいっぱいいた。
放課後。
女子達に教室に残るよう言われた。嫌な予感がした。
しかし、従わなければ、今までより酷い目に遭うだろう。
案の定、雨宮君の事で彼女達は怒っていた。
恥をかいた、と彼女達は言う。
雨宮君に近寄るな、とも言った。
今まで殴られたりしなかったが、今度は殴られたり、蹴られた。
数人に囲まれて殴るから、逃げるにも逃げれない。
さらに私の服を脱がし、恥ずかしい写真を携帯で撮られた。
痛みと悔しさと辛さが身に染みる。
彼女達は気がすんだのか、ボロボロになった私を置いて出て行った。
もう生きていけない。
生きていくのが辛い。
私は鞄からカッターを取り出した。
もう生きていたくない。
もう死にたい。
私はただ、それだけを願っていた。
手首にカッターを当て、切ろうとした刹那、誰かが教室の扉を開いた。
反射的に振り向くと、そこには雨宮君が立っていた。
どうしよう。
誰も来ないと思ったのに。
こんな姿を見られるなんて…。
どうしよう。どうしよう。
私はパニックに落ちてた。
「高橋さん」
不意に雨宮君が私の名を呼んだ。
彼は、にこりと微笑んでいる。
そして、私の元に来てしゃがむと、私の手首を掴んだ。
じっと私の手首を見ている。
「辛かったでしょう?死にたいと思ったでしょう?でもね、何も死ぬことはないよ」
雨宮君は優しく、子供をなだめるように言った。
彼の意外な言葉に、私が固まっていると、彼は優しく微笑んだ。
「僕がいじめの代わりになってあげるよ」
「え?」
今、彼はなんて言った。
いじめの代わりになる?
一体何を言っているのだろうか。理解できない。
けれど、雨宮君は穏やかに微笑んだまま。
「いじめられたくないでしょう。恥ずかしい写真もばら撒かれたくないでしょう?」
「!…どうして、それを」
「僕は何でも知ってるよ。ねぇ、いじめられたくないでしょう?」
雨宮君は再度私に問いかけた。
彼の言葉に私は頷いた。誰がいじめられて嬉しいのだろうか。
私は普通の人生を送りたいだけ。
いじめから抜け出したいだけ。
「じゃあ僕が身代わりなってあげる。そうしたら、君は明日からいじめられないよ」
「…本当に?」
私が訝しげに聞くと、雨宮君は「うん」と頷いた。
そして、私の手首を強く掴んだ。
この時、私は雨宮君を怖いと思った。
なんだか彼は、他の人とは違うのだ。
「けど、代わりに君の手を僕にちょうだい」
さっきまで優しく微笑んでいた雨宮君とは思えないほど、冷たい笑みだった。
怖い、彼は一体何を言っているんだろう。
得体の知れないものに彼がなっている気がした。
「だって君の手、とても綺麗だもん。白いし滑らかできめ細かいし。別にいいでしょ?
死ぬより手がない方がマシだと思うけど。それにもういじめられなくなるんだよ」
いじめられなくなる―――。
その言葉が私の心を揺らめかせる。
そうだ、私はさっき死のうとしたのだ。
それはいじめが原因で。
生きていくことが辛いと思ったのは、全ていじめのせい。
私は怖ろしい取引だとわかっているが、雨宮君に手をあげることにした。
それに彼の言っていることは、嘘かもしれない。
彼は、とても嬉しそうだった。
「約束だよ。いじめられなくなったら、僕に手を差し出すんだよ」
私は彼の言葉に再度頷いた。
次の日、私は学校に登校した。
正直、雨宮君の言うことを信じたわけではない。
むしろ、あれは夢だったのではないかと思えた。
重い足取りでクラスに入ると、私に気づいた子達が挨拶してくれた。
「おはよう、かおり!」
「どうしたの?顔色悪いんじゃない?」
私は驚いて、彼女達の顔を見つめてしまった。
いじめられる前と同じ時に私と接している。
皆、私に普通通りに接してくれたのだ。
私は嬉しかった。
雨宮君の言うとおり、私はいじめられなくなった。
私が友達と久しぶりの談笑をしていると、誰かが教室に入ってきた。
それは雨宮君だった。
一気に教室の雰囲気が変わった。
女子達がヒソヒソと彼の悪口を言うのが聞こえた。
男子の誰かが足を出し、雨宮君はつまづいて転んだ。
クラスの皆が彼を嘲笑った。
その日から、雨宮君は皆からいじめられた。
私はできるだけ、彼がいじめられている現場に会わない様にした。
彼は確かに私の恩人だ。
しかし、私にいじめを止めることなんてできない。
もし止めたりして、私がまたいじめられることを考えると怖くて出来なかった。
それに、彼自らが望んだ状況だ。私が止めても意味がない。
私は自分にそう言い聞かせた。
しかし、雨宮君が無言で私を責めているような気がした。
男子達は彼を殴ったりしていた。女子もそれに参加したりする。
放課後、彼を殴ったりするのが習慣になっていた。
私はいつものように、放課後すぐ帰ろうとした。
雨宮君がまたいじめられているのだ。
皆から殴られたり、蹴られたりしている。
「かおり、あんたも参加しなよ」
帰ろうとする私を女子の一人が呼び止めた。
皆が一斉に私を見る。
「かおりは、いつもすぐ帰るよね。今日ぐらい参加しなよ」
その子の言葉に皆が同調しだした。
「俺達の仲間になるのが嫌なのか?」
男子の一人がそう言った。
もし、ここで私が参加しなかったりしたら、いじめられるのだろうか。
怖かった。皆から仲間はずれにされることが、怖かった。
けれど、雨宮君を殴ることも蹴ることもできない。
しかし、女子の一人が私の腕を掴み、うずくまっている雨宮君の前に立たせた。
「かおりは初めてだから、ホウキでも持って殴っちゃいなよ」
その子は、私に無理矢理ホウキを持たせた。
「できないはずないよな?俺たち、仲間なんだから」
「そうだよ。私達、友達でしょう」
皆、口々にそう言う。
私は震えを押さえ、ホウキで雨宮君を叩いた。
不意に雨宮君が私を見た。
その目は、私を責めているようだった。
恩知らず。最低な人間だな。
目は私を責める。
気がつくと、私は夢中で彼を叩いた。
そんな目で私を見ないで。
見ないで、見ないで、見ないで。
私は悪くない。仕方がなかった。これは仕方がないことだ。
皆、私に叩かれ無抵抗な雨宮君を笑った。
雨宮君は、私が殴ったホウキがお腹に入ったのか、胃液を吐いた。
「やだーかおり、興奮しすぎ!!」
「ハハハ!!!高橋、お前最高だよ!!」
皆、口々に私を褒めた。
私はその日から、毎日、雨宮君を殴ることに参加した。
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僕の母様はとても美しく賢い方です。
母様は背が高くて、細いです。
髪の毛は真っ黒でとても長いです。
母様は病人のような青白い肌をしています。
しかし、母様からか弱げな印象はありません。
それに母様は、とても美しい顔立ちをしています。
その中性的な美しさは、男に見間違えるほど凛々しく、女のような柔らかさがあります。
特に印象的なのは、母様の目の色です。
母様の左目は夜の闇のように真っ黒ですが、右目は月光のような美しい銀色をしています。
その不思議な瞳を見ていると、吸い込まれそうな感覚に襲われます。
母様は強くて優しい人です。
僕はそんな母様をもってとても幸せです。
ある日、母様の手を繋いで僕は出かけました。
行き先を聞いても、母様は答えてくれません。
ただ、口元に笑みを浮かべ「行けばわかるさ」と答えるだけです。
僕たちは暗い道を歩いていきました。周りは何も見えません。
僕は怖くて母様の手をぎゅっと握りました。
冷たい母様の手だけが、唯一僕に安心感を与えてくれるのです。
暗闇を抜けると、そこは恐ろしい所でした。
赤く燃え盛る炎。人々の呻きと叫び。異形の者たち。
そこでは異形の者たちが人間を罰していました。
目玉をくり抜けられ、身体の肉をそぎ落とされていく人。
爪をはがされ、指を一本一本落とされていく人。
灼熱の炎で火炙りにされていく人。
熱く煮え滾った液体を喉に押し込まれていく人。
身体をバラバラにされ食べられていく人。
僕は恐ろしくなり息を呑みました。
こんな世界があったのでしょうか。
「怖がらなくてもよい。私達は罰されない」
母様が優しい声音で僕に言いました。
母様のもとに黒い衣服を着、頭に冠を被った男の方がやってきました。
とても恐ろしい顔をしていて、僕は怖くて目を逸らしてしまいました。
ですが、二人はなにやら楽しげに会話をしています。
ほどなくして、男の人は何処かへ行ってしまいました。
母様は僕の手を引き、歩んでいきました。
「母様…ここは一体なんでしょうか?」
「ここかい?ここは地獄だよ」
母様はさらりと答えました。
本当は、薄々わかっていました。
しかし、まさか本当にここが地獄だったとは…。
僕は地獄が恐ろしいです。こんなに怖い世界があったのでしょうか。
絶え間なく、人々の苦痛の叫び声は響き、異形の者の笑い声が響きます。
色んな所があり、母様は罰の種類、どのような罪を犯した者が地獄のどこに落ちるか説明してくださいました。
「母様、なぜ地獄なんかがあるのでしょうか?
僕は地獄が恐ろしいです。なくなったりはしないのでしょうか?」
僕のこの問いに母様は、ふっと笑いました。
それは何処か悲しげな笑みで、僕は胸が締め付けられる思いをしました。
「一生なくならないよ。
人は生きているうちに他の人を傷つけたりする。
傷つけられた人間は思う。
「傷つけた相手が憎い。あいつにこの痛みをわからせてやりたい!」
傷つけた人間が生きているうちに、因果応報で罰が来るかもしれない。
しかし、こなかったら?
傷つけられた人間は、釈然としない。許さない。怨みは増大するばかり。
例え来たとしても満足しない。相手を怨み呪い続ける。
その怨みが地獄を作るのだよ。
地獄をより残酷に、より恐ろしく作る。
ゆえに、地獄は永遠になくならない」
母様がそう言い終わった刹那、亡者の一人が母様の足首を掴み、救いを求めてきました。
「だ、ず、げ、てぇ」
その亡者は左目が取れ、だらりとぶら下がっています。
髪の毛は抜け落ちたのか、それともむしり取られたのか半分ありません。
身体も鞭打ちにあったのか、それとも、皮をはがされたのか痛々しいほど皮は裂け、肉が盛り上がっています。
手もボロボロで爪はありません。よく見ると、腸が少しはみ出ていました。
僕はこの亡者を知っています。間違いありません。
レオンさんです。
レオンさんは、僕にとても優しくしてくれた方です。
先日亡くなったと僕は母様から聞きました。
生前、レオンさんは小さな子供を売買し、その中で気に入った子がいるとバラバラにしていたそうです。
時々レオンさんは、四肢のない子供を僕の友達として紹介してくれた事がありました。
その子は男の子で、目玉の代わりにダイアモンドを埋め込まれ、常に裸でした。
僕がその子に話しかけても何も答えてくれません。
本当にただ生きているだけの子でした。
母様は無表情にレオンさんの手を払うと、ブーツでレオンさんを蹴っ飛ばしました。
レオンさんは遠くに飛びました。そして、悲鳴が聞こえてきました。
母様は僕の手を取り、もと来た道に帰りました。
僕は母様に、僕は地獄に落ちるのかと聞きました。
「それはわからないな」
母様はそう言って微笑みました。
亡者の悲鳴は、いつまでも響いていました。
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