一週間がたった。
私はすっかり、雨宮君との約束を忘れ、今の生活を満喫してた。
私は放課後、皆には参加せず図書館に向かった。
読みたかった本が今日、入ったはずだ。
放課後は人もいないので、色々と便利だ。
私が本をじっくり見ていると、後ろに人の気配を感じた。
「高橋さん」
それは雨宮君だった。私は驚いて、後ずさった。
毎日暴行を受け、彼の顔は以前の面影がない。
そのため、彼は顔に包帯を巻いている。
前に男子達が無理矢理、彼の包帯をとったことがあるのだ。
その時の彼の顔は、以前の面影はまったくなく、醜く変形していた。
包帯から覗く目が私を責めているようだった。
しかし、私はきっと彼を睨みつけた。
普段彼を殴っているせいか、私は彼より上の存在だと思った。
「一体、何の用よ!?」
「手…約束だよ。頂戴」
雨宮君は、無感情にそう言った。
私は怒りを露にして、声を荒げた。
「何、馬鹿なこと言ってんの!?誰がアンタなんかに手を渡すもんですか!!!」
「約束を破る気?」
雨宮君は、静かにそう言った。
その態度に、私はだんだんと腹が立ってきた。
「私の目の前から消えてよ!!!!この変態!!!!!!!!」
私は、手に持っていた本を彼に投げつけた。
しかし、彼はひょいと避けると、私の右手首を掴んだ。
「君には本当、失望したよ…約束を果たしてよね」
「きゃああああああ!!!!何すんのよ、この変態!!!!!」
私は暴れまくった。
そして、左手で無意識に雨宮君の顔の包帯を掴み、引っ張った。
包帯から露になったのは、暴行を受け、醜く変形した顔ではなかった。
初めて会った時と同じ、端正な美しい顔だった。
私がその事に驚いていると、彼は笑った。
「手は貰うからね…」
不意に、私の視界は黒くなり、そして私の意識はなくなった。
私が目を覚ました時、そこは見慣れたいつもの教室だった。
雨宮君の事は、夢だったのだろうか。
私は身体を起こした。そして、すぐ恐怖に駆られた。
クラスメイトが皆、私を囲んでいるのだ。
ニヤニヤと笑いながら、ホウキを持っている者もいた。
この光景は、いつも雨宮君が皆に暴行される時と一緒である。
「い、いや!!!誰か助けて!!!」
私は叫び、助けを求めた。しかし、誰も助けてくれない。
視界の隅に雨宮君の姿を見つけた。
「雨宮君、助けて!!」
私は彼に手を伸ばし、助けを求めた。
雨宮君は初めて会った時と同じように、端正な顔に笑みを浮かばせてた。
「高橋さん、君からもらった手は大切にするからね」
雨宮君の手には、手首から切断された白い手が二つあった。
彼はそれを愛しそうに頬擦りすると、教室から出て行った。
私は自分の手を見た。
制服の袖から先、何もなかった。
両手ともなくなっていた。
皆が後ろに立って、笑っていた。
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