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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 08:19 ×
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February / 17 Sat 22:59 ×


僕の母様はとても美しく賢い方です。

母様は背が高くて、細いです。

髪の毛は真っ黒でとても長いです。

母様は病人のような青白い肌をしています。

しかし、母様からか弱げな印象はありません。

それに母様は、とても美しい顔立ちをしています。

その中性的な美しさは、男に見間違えるほど凛々しく、女のような柔らかさがあります。

特に印象的なのは、母様の目の色です。

母様の左目は夜の闇のように真っ黒ですが、右目は月光のような美しい銀色をしています。

その不思議な瞳を見ていると、吸い込まれそうな感覚に襲われます。

母様は強くて優しい人です。

僕はそんな母様をもってとても幸せです。

 

ある日、母様の手を繋いで僕は出かけました。

行き先を聞いても、母様は答えてくれません。

ただ、口元に笑みを浮かべ「行けばわかるさ」と答えるだけです。

僕たちは暗い道を歩いていきました。周りは何も見えません。

僕は怖くて母様の手をぎゅっと握りました。

冷たい母様の手だけが、唯一僕に安心感を与えてくれるのです。

暗闇を抜けると、そこは恐ろしい所でした。

赤く燃え盛る炎。人々の呻きと叫び。異形の者たち。

そこでは異形の者たちが人間を罰していました。

目玉をくり抜けられ、身体の肉をそぎ落とされていく人。

爪をはがされ、指を一本一本落とされていく人。

灼熱の炎で火炙りにされていく人。

熱く煮え滾った液体を喉に押し込まれていく人。

身体をバラバラにされ食べられていく人。

僕は恐ろしくなり息を呑みました。

こんな世界があったのでしょうか。

「怖がらなくてもよい。私達は罰されない」

母様が優しい声音で僕に言いました。

母様のもとに黒い衣服を着、頭に冠を被った男の方がやってきました。

とても恐ろしい顔をしていて、僕は怖くて目を逸らしてしまいました。

ですが、二人はなにやら楽しげに会話をしています。

ほどなくして、男の人は何処かへ行ってしまいました。

母様は僕の手を引き、歩んでいきました。

「母様…ここは一体なんでしょうか?」

「ここかい?ここは地獄だよ」

母様はさらりと答えました。

本当は、薄々わかっていました。

しかし、まさか本当にここが地獄だったとは…。

僕は地獄が恐ろしいです。こんなに怖い世界があったのでしょうか。

絶え間なく、人々の苦痛の叫び声は響き、異形の者の笑い声が響きます。

色んな所があり、母様は罰の種類、どのような罪を犯した者が地獄のどこに落ちるか説明してくださいました。

「母様、なぜ地獄なんかがあるのでしょうか?

僕は地獄が恐ろしいです。なくなったりはしないのでしょうか?」

僕のこの問いに母様は、ふっと笑いました。

それは何処か悲しげな笑みで、僕は胸が締め付けられる思いをしました。

「一生なくならないよ。

人は生きているうちに他の人を傷つけたりする。

傷つけられた人間は思う。

「傷つけた相手が憎い。あいつにこの痛みをわからせてやりたい!」

傷つけた人間が生きているうちに、因果応報で罰が来るかもしれない。

しかし、こなかったら?

傷つけられた人間は、釈然としない。許さない。怨みは増大するばかり。

例え来たとしても満足しない。相手を怨み呪い続ける。

その怨みが地獄を作るのだよ。

地獄をより残酷に、より恐ろしく作る。

ゆえに、地獄は永遠になくならない」

母様がそう言い終わった刹那、亡者の一人が母様の足首を掴み、救いを求めてきました。

「だ、ず、げ、てぇ」

その亡者は左目が取れ、だらりとぶら下がっています。

髪の毛は抜け落ちたのか、それともむしり取られたのか半分ありません。

身体も鞭打ちにあったのか、それとも、皮をはがされたのか痛々しいほど皮は裂け、肉が盛り上がっています。

手もボロボロで爪はありません。よく見ると、腸が少しはみ出ていました。

僕はこの亡者を知っています。間違いありません。

レオンさんです。

レオンさんは、僕にとても優しくしてくれた方です。

先日亡くなったと僕は母様から聞きました。

生前、レオンさんは小さな子供を売買し、その中で気に入った子がいるとバラバラにしていたそうです。

時々レオンさんは、四肢のない子供を僕の友達として紹介してくれた事がありました。

その子は男の子で、目玉の代わりにダイアモンドを埋め込まれ、常に裸でした。

僕がその子に話しかけても何も答えてくれません。

本当にただ生きているだけの子でした。

母様は無表情にレオンさんの手を払うと、ブーツでレオンさんを蹴っ飛ばしました。

レオンさんは遠くに飛びました。そして、悲鳴が聞こえてきました。

母様は僕の手を取り、もと来た道に帰りました。

僕は母様に、僕は地獄に落ちるのかと聞きました。

「それはわからないな」

母様はそう言って微笑みました。

亡者の悲鳴は、いつまでも響いていました。


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