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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
May / 04 Sat 07:09 ×
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October / 29 Mon 00:13 ×

私は人付き合いがそんなに下手な人間ではない。
そこそこ愛嬌があり、誰とでもすぐ友達になれる。

けれど、そこからがいつも問題だった。

私は人の視線が気になり、いつも人の顔色ばかりうかがっていた。

親しくなった人たちから、私は嫌われるのが怖い。

だから、親しくなると私は、友達の顔をうかがった。

彼らの些細な言葉、行動を私は、いつも真に受けていた。

そこに彼らの本心が隠れていると思っているからだ。

私はそんなことでいつも傷つき、人知れず泣いたりした。

誰もそんな私には気づかない。
 


それはツアーの日だった。

親しい友達に一ヶ月前から、私はツアーに誘われていた。

私の家は厳しく、それに一人でいるのが気が楽な私は、ツアーに参加したくなかった。

けれど、皆、熱心に、それこそ本当、毎日、私をツアーに誘うのだ。

そのツアーは、大学の英語学科が開催するツアーで、外国人と一緒に日本の田舎に遊びに行く一泊二日の旅だ。

私の友達が丁度、英語学科の生徒で開催者の一人でもあった。

彼らの熱心さに結局私は折れ、母を必死に説得し、なんとか参加することができた。

その時の彼らの喜びようといったら…皆、とても喜んでいたものだ。

私もそんな彼らの笑顔が見れて、嬉しくて一緒に笑った。


 
ツアーの集合場所は大学だった。

私は朝から早起きし、バッグの中身を準備し、大学に向かった。

ちょうどの時間についたので、そのまま皆と一緒に、バスに乗り込んだ。

ツアー参加者は、全部で六十人ほどだった。意外にも多く集まり私はびっくりした。

遅刻する人間が何人かいて、おかげでバスの出発は予定より三十分遅れた。

バスの中では、ビンゴゲームなどをして遊んだ。

先にレストランで昼食をとり、目的地の田舎について、皆、自然を満喫した。

そこまでは私もそこそこ楽しめた。

けれど、夜からが問題だった。

私たちが泊まっている場所は、その田舎で一番綺麗な旅館である。

食事もおいしく、部屋一つに温泉があるという豪華さである。

ただしそれは、一番高い部屋のことだ。

私は運良く、ビンゴゲームでその部屋を当て、皆に羨ましがられた。

夕食が終わった後、皆で飲み会を開催することになった。

私はお酒が飲めないので、飲み会には参加したくなかった。

なぜなら、私はお酒を飲むと、すぐ吐いてしまうからだ。

けれど皆、私をほぼ強制的に参加させた。

皆が楽しくお酒を飲む中、私は一人でウーロン茶を飲んでいた。

私だけ取り残された感じがして、とても寂しかった。

けれど、皆、そんな私に気づかず、わいわいとお酒を飲んでいた。

誰も私には話しかけてこない、傍にいてくれない。

皆、後輩や先輩方の下に行き、私と言う存在を感じていないようだった。

あまりの惨めさと寂しさに私は、一人部屋を抜け出し、自分の部屋で持ってきた小説を読んだ。

ツアーに小説なんか持って来るつもりはなかった。

ただ、買った小説をまだ読んでいないから、もしかしたら読めるかもしれないと思ったのだ。

けれど、今は小説に救われた。

もし、小説がなかったら、私は何をしてれば良かったのだろう。

一人であのつまらない宴会にいなければならなかったのだろうか。

そう考えると、私はあまりの惨めさに泣けてきた。

家に帰りたいと切実に願った。


 
気づいたら、私は寝ていた。

起きた時はもう朝で、時計を見たら、もう少しで朝食の時間だった。

私は急いで身支度を整え、食堂に向かった。

そこには数人のツアー参加者しかいなかった。

皆、昨日の酒で酔いつぶれ、まだ起きていないのだ。

私は一人で食事をとった。

その状況がまるで、私の心のようにとても寂しいものだった。

皆、昨日の宴会の余韻でぐっすり眠っているのだろう。

私はそんな中にも入れず、皆と楽しむこともできず、一人取り残されている。

なぜ、こんなところに来たんだろう。

食事中は、ずっとそれだけ考えていた。

私なんて本当は必要ない。

私が参加した意味は一体何なんだろう。

皆にとって私は一体…

そう考えていくと、どんどん悲しい気持ちになり、私は泣きそうになった。

急いで朝食をすませ、私は部屋に戻った。

そこで私は人知れず泣いた。

その間、私の携帯は鳴らないままだった。

 

その後のツアーはまったく楽しめなかった。

皆、私に話しかけてこなかった。

おのおのが自分のことでいっぱいで楽しんでいた。

私が暗いせいなのかもしれないが、なぜ、ここまで、皆、私を放置するのだろう。

本当は皆、私が嫌いなのではないだろうか。

そうでなければ、皆、こんなことしない。

私はこの状況がある種、一種のいじめのように思えてきた。

けれど、本人達は、まったくそんなことに気づいていないのだ。

彼らは新しい友達を作ることで大変なのだ。

私と言う存在を忘れて。

友達なんて本当はいなかったんだ。

誰も私の事を 気にかけていないのだ。

その状況が余計、私を暗くした。

けれど、私もそれなりに頑張って笑顔を作り、皆に話しかけたりした。

だが、友達の一人が私の暗い態度が気に障ったのか、不機嫌だった。

そのせいで、私は余計、家に帰りたいと思った。

私は、帰りのバスでは泣いていた。

けれど、誰一人気づいてくれなかった。

たとえ、気づいたとしても彼らは、何もしてくれないだろう。

何も。


 
家に着いたとき、私は本当に嬉しくて、泣いた。

このツアーで、私はずっと泣いてばかりだ。

悲しくて泣いているのだ。

私の価値がわかったような気がした。

大して大切な存在ではない、と直接言われているような気がした。
 
明日から、また彼らに会う。

彼らは口々に「昨日のツアーは、楽しかったね」と話すだろう。

私のことなんて気にかけず、泣いていたことなんて知らず。

結局、私は彼らの友達にはなれなかったのだ。

彼らにとって私は、ペットかなんかなのだろう。

信頼していたものに裏切られた感じがした。
 


辛い時、私はいつも髪を切った。

女は失恋すると、髪を切るとよく言われている。

その理由は、私的に、髪を切ると新しい自分になれるからだと思う。

私は今の自分が嫌いな時に、よく髪を切る。

新しい自分になりたい時に、髪を切る。

けれど先月、私は失恋して髪を切った。

私にとって、いや、女にとって、髪を切るというのは、自分の心を整理させるための、儀式のようなものなのだ。

けれど、今、自分でわかるほど、私は情緒不安定だ。

私は一人ぼっちだ。

一人なのだ。

沢山の人に囲まれているのに、この孤独感。

なんて恐ろしいものなんだろう。

人が怖い。

友達だと思っていたこの人達が怖い。

強い自分になりたい。新しい自分になりたい。

けれど、もう切る髪がない。

儀式ができない。

手っ取り早く、気持ちを切り替えるための儀式ができない。

何を切ればいいのだろう。

一体、何を切れば。


 
不意に目に入った左手首。

白い肌にうっすらと青い血管が浮き出ている。
 


ああ、まだ切るものはある。

手首を軽く切ろう。

うっすらと切ってみよう。

世間ではリスカと呼ばれる行為だが、私自身やってしまおうと思う日が来るとは、思わなかった。

そう思うと、私は凄く安心した。

まだ大丈夫だ。

私は、まだ大丈夫だ。
 
私は洗面所に向かい、普段使うカミソリを鞄に入れた。

それは眉剃り様のほんの小さな黄色いカミソリ。

大丈夫だ。

これが私の今の居場所だ。

これがあれば、私は安心できる。

ダメなときは、切ってしまおう。

私にはまだ、手首がある。


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March / 28 Wed 23:22 ×

今日運ばれてきた子は、五歳ぐらいの少年だった。

運んできたのは、いつも通り、リーとアカギの男二人組みだった。

私は準備をして待機していたので、すぐさま手術をした。

さらってきた少年の心臓を、依頼主の少女に移植する手術だ。

地下にある病室は、どこか冷たい。

それでも、私の額には汗が流れる。



三年前、父親が博打で借金をした。

最悪なことに、闇金から借金をしていたので、ヤクザが来た。

そして、息子である私が外科医だとわかると、借金をチャラにする代わりに、今の仕事をすることになったのだ。

最初は、嫌だった。

彼らが運んでくる臓器は、鮮度も悪く、とてもじゃないが患者に移植する気になれなかった。

時々、どこからかさらった子供を連れて来ては、移植手術をさせる。

それが私に罪悪感を与えるのだ。

しかし、今では私自らが志願して、この仕事をしている。

この仕事は、私の医者としての実力を高める。

誰だって手術をして、自分の腕を高めたいものだ。

それは自然なことだった。

今の医療界は腐っている。

名ばかりの医師なんかよりも私の方が実力がある。

私は他の医師を見かけ、心の中で彼らを嘲笑う。

私はその度、優越感に浸るのだ。



少女への手術は、約八時間で終わった。

予想外に何もトラブルはなく、順調に終わった。

少女は速やかに、上の病室に移送させた。

それは勿論、アカギとリーの仕事である。

少女が長生きできるかは、私は知らない。

心臓移植をしても、およそ一年ほどしか生きられないだろう。

それは神のみぞ知ることだ。

私は、まだ処理をしなくてはならない。

心臓をくり抜いた少年の死体は、まだまだ使い道がある。

少女の手術中、私は他にもまだ少年の使えそうな臓器は、全て摘出しておいた。

臓器は全て、鮮度が命である。鮮度が落ちたものは、使えない。

これらも全て次の患者の為に残すのだ。

世の中、臓器が欲しい人間は、いくらでもいる。

特に子供の臓器は、決定的に世界で足りない。

私の患者が待ち望んでいるのだ。

そして、ほとんどの臓器と角膜がなくなった少年の死体を、私は細かく部品ごとに切り分けるのだ。

何故こんなことをするか。

それは売れるからである。

病院や研究所などには、例え肉片のカスであろうと高く売れるのだ。

中には、カニバリズムを持つ金持ちもいて、彼ら相手に売ることもある。

もしこの少年が美しい容姿をしていたら、ネクロフィリア相手に売ることもできた。

それは私の仕事ではない。

死体を美しく保つエンバーマーの仕事である。

しかし、残念ながら少年の容姿は、美しくない。

ゆえに、身体を売ることにしたのだ。

ここまですると、残酷だと私のことを言うだろう。

だがしかし、中途半端に少年を殺し、捨てるほうが残酷ではないか。

ならばいっそ、少年の身体を使って、他の人間を助けた方がタメになるではないか。

私は、細かく切った部品たちを丁寧に、保存し、少年の死体、ただの残りカスになったものを黒いビニールに入れた。

これは、アカギとリーが山の中にでも捨ててくれる。

手術で使った物を綺麗に消毒し、私は次の手術の準備をする。

次の手術は簡単なものだ。

人間の四肢を切断し、縫合するだけなのだから。

金持ちの中にも、そのような性的趣向の持ち主もいる。

ゆえにこのような手術は、珍しくも何もない。

所詮、金と狂気の世界なのだ。

世の中は本当、狂っている。



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March / 28 Wed 20:07 ×

今日も依頼が入った。

私は手早く支度をすませ、外に待たせてある白いワゴン車に乗り込む。

運転席には、見慣れた顔のリーが座っていた。

私は後ろに座った。

フロントガラス以外は、全て黒いフィルムを貼られていて、外から中は見えない。

この仕事には、最低限必要なことだ。

リーは、私が車内に入ったのをバックミラーで確認すると、車を走らせた。

リーと私は、かれこれ十年ほどの付き合いだ。

リーは私よりも五つ年上の中年男性で、いつも静かで滅多に話したりしない。

私もリーと会話したいとは思わないから、丁度いい。

彼は色んな道を知っているので、運転手として適任だ。

リーは、あるニュータウンに入った。

そこのニュータウンには、入り口の方に警備員が三人いる。

リーは窓ガラスを開け、身分証を警備員に渡した。

警備員は何も疑わず、中に入れてくれた。

リーはゆっくりと車を走行し、道路にいる人々を観察する。

夕方なので、子供達が沢山遊んでいた。

母親達も子供達を微笑ましく見守っていたり、母親達で談笑している。

人は、人が沢山いると、つい油断してしまうものである。

さらにニュータウンに警備員がいると、安心してしまうのだ。

かなり奥まで、ニュータウンに入った。

ある角で少年達は、サッカーボールを蹴って遊んでいた。

少年達は、どうやら五、六歳ぐらいだ。

ちょうどいい。リーもそう思ったのだろう。

そして、ボールがこちら側に飛んできた。

リーは、車を止めた。

少年の一人が、走ってボールを取りに来る。

私は急いで車から降りた。

今がチャンスなのだ。

そして、ボールを取りに来た少年を後ろから襲い、手に持っていたハンカチを少年の口元で押さえる。

驚いて何が起きたかわからない少年は、一瞬で気を失い、私は少年を担ぎ、車に運ぶ。

遠くで母親達が驚いて見つめ、そして、少年の母は悲鳴を上げた。

リーは、私達が車に乗ったことを確認すると、急いで車を出した。

人の足と車では、速さが違う。残念ながら追いつけないのだ。

そして、入り口のところで警備員に身分証を返してもらう。

ここは出入り口が一緒なのだ。

私は勿論、少年が警備員から見えないように隠す。

すんなりと私達の車は、出て行った。

子供は宝だと、昔の人間は良く言ったものだ。

私達の仕事でも、子供は大事である。

少年の母親には気の毒だが、仕方がない。

また子供でも作ればいいだろう。

この少年は、とても健康そうだ。

残念ながら顔立ちは、あまり良い方ではない。

まぁ別に関係ない。

依頼主は、五、六歳の子供の心臓が欲しいのだから。

親と言うものは、自分の子供の為だと鬼にでもなるようだ。

自分の子供が死にそうならば、他の子供を殺してでも、自分の子を助けたいのだ。

少年は、まだ気を失っている。

次に会うときは、原型を留めているだろうか。



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March / 02 Fri 22:39 ×

彼女は、少し変わった子だ。

外見は、いたって普通。むしろ、美人で色白だ。

ただ、中身が違うのだ。

雰囲気も変わってるし、考え方も変わっている。

彼女は、一人暮らしをしている。

彼女の部屋には、テレビがなかった。

「テレビ見ないの?」

「テレビはダメ」

「どうして?」

「テレビは、電波ばかり飛ばすから。

電波を受信すると、頭が痛くなる。

酷い時には、吐き気もする。

だから、テレビは嫌い。毒電波ばかり垂れ流す。」

彼女は、緑茶を啜った。

やっぱり彼女は、変わっている。

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February / 25 Sun 23:04 ×


「やぁ、子猫ちゃん」

私を見かけるとジョウは、そう言って手を振った。

「その呼び方、やめろって言わなかった?」

私は、不機嫌な表情をした。

子猫ちゃん、何て呼ばれて嬉しい人間がいるのだろうか。

「そう言うところが"子猫ちゃん"なんだよ」

ジョウは、そう言うとキセルをくわえたまま、笑った。

ジョウは私より三つ年上で、いつも飄々としてて掴みどころのない男だ。

おじさんと言うわけでもなく、お兄さんというわけでもない。

その中間にいるような人間で、いつも気だるそうな笑みを浮かべている。

私は、髪は黒いけど瞳が青いジョウは私達とは違う人間なんだと思う。

「どこに行くんだい?」

「さぁ?まだ決めてない」

「じゃあ俺と一緒にいよう。そこの店の菓子が美味しいんだよ」

そう言ってジョウは、私の返事を聞かず店に歩いて行ってしまった。

私は黙ってジョウの後を付いて行った。ジョウは店の奥に座った。私も隣に座った。

私は、店のお勧めを頼んだ。餡蜜だった気がする。

繁盛しているのに関わらず、品(やっぱり餡蜜だった)はすぐ来て、私は早速口にほおばった。

ジョウはお茶だけ頼んだのか、お茶に口を付けていた。

「子猫ちゃん、俺と一緒で怖くないの?」

「何でよ?」

「まだ子猫ちゃんだから、教えないよ」

意味ありげにジョウは微笑んだ。

私はジョウのセリフを無視して、餡蜜を平らげた。

「子猫ちゃん、まだ、眼帯外れないのかい?」

「うん、まあね」

私は左目に付けている眼帯に手を触れた。

実際、怪我をしたとか病気だとかそういう理由で、付けているわけではない。

家族以外、その理由は知らない。

ジョウは興味ありげに眼帯を見ていたが、私が黙っていると店内の人間を観察し始めた。

私はそっとジョウを見た。

ジョウは整った顔立ちをしている。

青い瞳に影を落とすほどの長い黒い睫毛。

すーっと通った高い鼻筋。

そして、白い肌。

私達と顔の作りが違うジョウは、きっと別の人間なんだと思った。

不意にジョウが私の視線に気づいた。

「俺を見つめてどうしたんだい?」

「別に。ジョウに死相が見えただけ」

ふざけて言ったつもりなのだが、ジョウは口をつぐんでしまった。

悪ふざけが過ぎてしまったのだろうか。

私は慌てて、ジョウに謝ろうとした。

しかし、先にジョウがくすくすと笑い出したのだ。

「子猫ちゃんも言うねぇ~」

私も笑ったが、内心安堵した。

私達は、色々雑談した。他愛もない話。

それに飽きたので、私達は店をでることにした。

結構二人で雑談したせいか、外はもう暗かった。

私はジョウに「家に帰るから」って言って、別れようとした。

不意にジョウが私の腕を引っ張り、私を抱きしめた。

突然の事で私は驚き、動けなかった。

しばらくそうしていたのだと思う。

私はジョウの心臓の音を聞いていた。

その音だけがやけに現実的だった。

そして、ジョウはなんでもなかったかのように私を放し、微笑んだ。

「じゃあね、子猫ちゃん」

その笑顔は、なぜか見ていて胸が締め付けられるような笑顔だった。

ジョウはさっさと私に背を向け、行ってしまった。

私はしばし、そこに立ってジョウの背を見つめていた。

 

そして、

 

私はジョウの後を追いかけた。

 


私は人ごみをわけて夢中で走った。

直感で路地を曲がったり真っ直ぐ進んだりした。

だいぶ走ったので、肩で息をしていた所に男達の罵声が聞こえた。

私は、声のする方を走った。

なんとなく、そう直感でジョウがいると思ったからだ。

そこには地面に突っ伏したジョウを男二人が痛めつけていた。

「―――ジョウ!!」

私はジョウの名を呼び、駆け寄った。

男二人が一瞬驚いた表情をしたが、片方がすぐ私の腕を掴んだ。

「放せ!!お前ら、ジョウに何をした!?」

「嬢ちゃん、ちょっと待ちな。俺達の邪魔をするなんて、どういうつもりだ?」

私は男の腕を振り払う為、暴れた。しかし、男は私の腕を掴んで放さなかった。

「お前ら、今すぐ手を放せよ。後悔するぞ」

私がきっと睨みつけても、男たちは卑しい笑いを浮かべるだけだった。

「おい、よく見るとこいつ、かなりの上玉だな。眼帯なんて付けてるが間違いない」

「邪魔くせぇから取っちまおうぜ」

「やめろっ!!」

私は、眼帯に伸びる手から必死に逃れようとしたが、無駄だった。

男の手は私の眼帯を引きちぎり取った。

「!!お、お前…!!!」

私の左目を見て、男達は恐怖で震えた。

顔が青ざめている。

私の左目は、右目と同じ黒色ではない。

月光と同じ銀色である。

私は異眼として生まれたのだ。

私は男達を睨みつけた。

「早く立ち去れ!!」

恐怖で竦みあがっている男達に一喝すると、男達は情けない悲鳴を上げ逃げた。

私は、内心安堵した。そして、すぐジョウの元に駆け寄った。

「ジョウ!!しっかりしろ!!ジョウ!!」

ジョウの顔は痣や傷が出来ていて、見ていて痛ましかった。

必死にジョウを揺さぶり、私は何度も名を呼んだ。

流しそうになる涙をこらえ、何度も何度もジョウの名を呼んだ。

「ん…」

重たい目蓋をジョウはゆっくりと、開いた。

そして、その青い瞳に私を写すと微笑んだ。

「良かった!!やっと目を覚ましてくれた!!」

私は嬉しくて微笑み、泣いた。

「やぁ…君は誰?」

か細い声でジョウは、私に微笑みながら言った。

私は全身が凍りつくのを感じた。

「ヤダ、ジョウ、何言ってるの?私だよ…忘れたの?」

「僕はジョウって言うんだよ。ごめんね、君の事思い出せない」

ジョウはそう言って、また笑った。

その笑顔は、何も知らない子供のように無垢だった。

そして、ジョウの腕に見慣れぬ醜い痕を見つけた。

これはまさか…。

よく見ると、ジョウの周りには白い粉と注射器が散乱していた。

この粉は、阿片だった。

「ああ、君は綺麗だね。どうして泣いているの?泣いてはダメだよ」

ジョウは不思議そうな顔をして、私の頬に伝う涙を拭ってくれた。

けれど、私の涙は止まらなかった。


いつも気だるげな笑みを浮かべるジョウ。

私を子猫ちゃんと呼ぶジョウ―――!!


いない、もう、あのジョウはいない。

今、私の腕の中にいるジョウは、私の知っているジョウではない。

ジョウは、こんなに無垢に微笑んだりなどしない。

「…疲れた。少し寝かせてくれるかな。綺麗なお嬢さん、泣いてはいけないよ」

ジョウはそう言うと、また目蓋を閉じた。

私は、また耐え切れず泣いた。

ジョウは穏やかな顔で眠っている。



ごめんなさい。色々と意味のわからん作品でごめんなさい。

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