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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 06:49 ×
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February / 25 Sun 23:04 ×


「やぁ、子猫ちゃん」

私を見かけるとジョウは、そう言って手を振った。

「その呼び方、やめろって言わなかった?」

私は、不機嫌な表情をした。

子猫ちゃん、何て呼ばれて嬉しい人間がいるのだろうか。

「そう言うところが"子猫ちゃん"なんだよ」

ジョウは、そう言うとキセルをくわえたまま、笑った。

ジョウは私より三つ年上で、いつも飄々としてて掴みどころのない男だ。

おじさんと言うわけでもなく、お兄さんというわけでもない。

その中間にいるような人間で、いつも気だるそうな笑みを浮かべている。

私は、髪は黒いけど瞳が青いジョウは私達とは違う人間なんだと思う。

「どこに行くんだい?」

「さぁ?まだ決めてない」

「じゃあ俺と一緒にいよう。そこの店の菓子が美味しいんだよ」

そう言ってジョウは、私の返事を聞かず店に歩いて行ってしまった。

私は黙ってジョウの後を付いて行った。ジョウは店の奥に座った。私も隣に座った。

私は、店のお勧めを頼んだ。餡蜜だった気がする。

繁盛しているのに関わらず、品(やっぱり餡蜜だった)はすぐ来て、私は早速口にほおばった。

ジョウはお茶だけ頼んだのか、お茶に口を付けていた。

「子猫ちゃん、俺と一緒で怖くないの?」

「何でよ?」

「まだ子猫ちゃんだから、教えないよ」

意味ありげにジョウは微笑んだ。

私はジョウのセリフを無視して、餡蜜を平らげた。

「子猫ちゃん、まだ、眼帯外れないのかい?」

「うん、まあね」

私は左目に付けている眼帯に手を触れた。

実際、怪我をしたとか病気だとかそういう理由で、付けているわけではない。

家族以外、その理由は知らない。

ジョウは興味ありげに眼帯を見ていたが、私が黙っていると店内の人間を観察し始めた。

私はそっとジョウを見た。

ジョウは整った顔立ちをしている。

青い瞳に影を落とすほどの長い黒い睫毛。

すーっと通った高い鼻筋。

そして、白い肌。

私達と顔の作りが違うジョウは、きっと別の人間なんだと思った。

不意にジョウが私の視線に気づいた。

「俺を見つめてどうしたんだい?」

「別に。ジョウに死相が見えただけ」

ふざけて言ったつもりなのだが、ジョウは口をつぐんでしまった。

悪ふざけが過ぎてしまったのだろうか。

私は慌てて、ジョウに謝ろうとした。

しかし、先にジョウがくすくすと笑い出したのだ。

「子猫ちゃんも言うねぇ~」

私も笑ったが、内心安堵した。

私達は、色々雑談した。他愛もない話。

それに飽きたので、私達は店をでることにした。

結構二人で雑談したせいか、外はもう暗かった。

私はジョウに「家に帰るから」って言って、別れようとした。

不意にジョウが私の腕を引っ張り、私を抱きしめた。

突然の事で私は驚き、動けなかった。

しばらくそうしていたのだと思う。

私はジョウの心臓の音を聞いていた。

その音だけがやけに現実的だった。

そして、ジョウはなんでもなかったかのように私を放し、微笑んだ。

「じゃあね、子猫ちゃん」

その笑顔は、なぜか見ていて胸が締め付けられるような笑顔だった。

ジョウはさっさと私に背を向け、行ってしまった。

私はしばし、そこに立ってジョウの背を見つめていた。

 

そして、

 

私はジョウの後を追いかけた。

 


私は人ごみをわけて夢中で走った。

直感で路地を曲がったり真っ直ぐ進んだりした。

だいぶ走ったので、肩で息をしていた所に男達の罵声が聞こえた。

私は、声のする方を走った。

なんとなく、そう直感でジョウがいると思ったからだ。

そこには地面に突っ伏したジョウを男二人が痛めつけていた。

「―――ジョウ!!」

私はジョウの名を呼び、駆け寄った。

男二人が一瞬驚いた表情をしたが、片方がすぐ私の腕を掴んだ。

「放せ!!お前ら、ジョウに何をした!?」

「嬢ちゃん、ちょっと待ちな。俺達の邪魔をするなんて、どういうつもりだ?」

私は男の腕を振り払う為、暴れた。しかし、男は私の腕を掴んで放さなかった。

「お前ら、今すぐ手を放せよ。後悔するぞ」

私がきっと睨みつけても、男たちは卑しい笑いを浮かべるだけだった。

「おい、よく見るとこいつ、かなりの上玉だな。眼帯なんて付けてるが間違いない」

「邪魔くせぇから取っちまおうぜ」

「やめろっ!!」

私は、眼帯に伸びる手から必死に逃れようとしたが、無駄だった。

男の手は私の眼帯を引きちぎり取った。

「!!お、お前…!!!」

私の左目を見て、男達は恐怖で震えた。

顔が青ざめている。

私の左目は、右目と同じ黒色ではない。

月光と同じ銀色である。

私は異眼として生まれたのだ。

私は男達を睨みつけた。

「早く立ち去れ!!」

恐怖で竦みあがっている男達に一喝すると、男達は情けない悲鳴を上げ逃げた。

私は、内心安堵した。そして、すぐジョウの元に駆け寄った。

「ジョウ!!しっかりしろ!!ジョウ!!」

ジョウの顔は痣や傷が出来ていて、見ていて痛ましかった。

必死にジョウを揺さぶり、私は何度も名を呼んだ。

流しそうになる涙をこらえ、何度も何度もジョウの名を呼んだ。

「ん…」

重たい目蓋をジョウはゆっくりと、開いた。

そして、その青い瞳に私を写すと微笑んだ。

「良かった!!やっと目を覚ましてくれた!!」

私は嬉しくて微笑み、泣いた。

「やぁ…君は誰?」

か細い声でジョウは、私に微笑みながら言った。

私は全身が凍りつくのを感じた。

「ヤダ、ジョウ、何言ってるの?私だよ…忘れたの?」

「僕はジョウって言うんだよ。ごめんね、君の事思い出せない」

ジョウはそう言って、また笑った。

その笑顔は、何も知らない子供のように無垢だった。

そして、ジョウの腕に見慣れぬ醜い痕を見つけた。

これはまさか…。

よく見ると、ジョウの周りには白い粉と注射器が散乱していた。

この粉は、阿片だった。

「ああ、君は綺麗だね。どうして泣いているの?泣いてはダメだよ」

ジョウは不思議そうな顔をして、私の頬に伝う涙を拭ってくれた。

けれど、私の涙は止まらなかった。


いつも気だるげな笑みを浮かべるジョウ。

私を子猫ちゃんと呼ぶジョウ―――!!


いない、もう、あのジョウはいない。

今、私の腕の中にいるジョウは、私の知っているジョウではない。

ジョウは、こんなに無垢に微笑んだりなどしない。

「…疲れた。少し寝かせてくれるかな。綺麗なお嬢さん、泣いてはいけないよ」

ジョウはそう言うと、また目蓋を閉じた。

私は、また耐え切れず泣いた。

ジョウは穏やかな顔で眠っている。



ごめんなさい。色々と意味のわからん作品でごめんなさい。

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