今日も依頼が入った。
私は手早く支度をすませ、外に待たせてある白いワゴン車に乗り込む。
運転席には、見慣れた顔のリーが座っていた。
私は後ろに座った。
フロントガラス以外は、全て黒いフィルムを貼られていて、外から中は見えない。
この仕事には、最低限必要なことだ。
リーは、私が車内に入ったのをバックミラーで確認すると、車を走らせた。
リーと私は、かれこれ十年ほどの付き合いだ。
リーは私よりも五つ年上の中年男性で、いつも静かで滅多に話したりしない。
私もリーと会話したいとは思わないから、丁度いい。
彼は色んな道を知っているので、運転手として適任だ。
リーは、あるニュータウンに入った。
そこのニュータウンには、入り口の方に警備員が三人いる。
リーは窓ガラスを開け、身分証を警備員に渡した。
警備員は何も疑わず、中に入れてくれた。
リーはゆっくりと車を走行し、道路にいる人々を観察する。
夕方なので、子供達が沢山遊んでいた。
母親達も子供達を微笑ましく見守っていたり、母親達で談笑している。
人は、人が沢山いると、つい油断してしまうものである。
さらにニュータウンに警備員がいると、安心してしまうのだ。
かなり奥まで、ニュータウンに入った。
ある角で少年達は、サッカーボールを蹴って遊んでいた。
少年達は、どうやら五、六歳ぐらいだ。
ちょうどいい。リーもそう思ったのだろう。
そして、ボールがこちら側に飛んできた。
リーは、車を止めた。
少年の一人が、走ってボールを取りに来る。
私は急いで車から降りた。
今がチャンスなのだ。
そして、ボールを取りに来た少年を後ろから襲い、手に持っていたハンカチを少年の口元で押さえる。
驚いて何が起きたかわからない少年は、一瞬で気を失い、私は少年を担ぎ、車に運ぶ。
遠くで母親達が驚いて見つめ、そして、少年の母は悲鳴を上げた。
リーは、私達が車に乗ったことを確認すると、急いで車を出した。
人の足と車では、速さが違う。残念ながら追いつけないのだ。
そして、入り口のところで警備員に身分証を返してもらう。
ここは出入り口が一緒なのだ。
私は勿論、少年が警備員から見えないように隠す。
すんなりと私達の車は、出て行った。
子供は宝だと、昔の人間は良く言ったものだ。
私達の仕事でも、子供は大事である。
少年の母親には気の毒だが、仕方がない。
また子供でも作ればいいだろう。
この少年は、とても健康そうだ。
残念ながら顔立ちは、あまり良い方ではない。
まぁ別に関係ない。
依頼主は、五、六歳の子供の心臓が欲しいのだから。
親と言うものは、自分の子供の為だと鬼にでもなるようだ。
自分の子供が死にそうならば、他の子供を殺してでも、自分の子を助けたいのだ。
少年は、まだ気を失っている。
次に会うときは、原型を留めているだろうか。
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