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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
May / 04 Sat 00:09 ×
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February / 20 Tue 02:35 ×

最初は、クラスの女子皆から無視された。

誰一人、私に話しかけてくれない。

目を合わせてもくれない。

まるで私が存在しないかのように、振舞う。

原因は、きっとあれだろう。

些細なことで、リーダー格の子の自信を傷つけてしまった。

私は嫌われた。

その仕打ちとして、クラスの女子皆から無視された。

女子の雰囲気が彼らに伝わり、男子達は皆、知らんふり。

私は特に彼らと親しいわけでもないし、皆、厄介事には関わりたくないものだ。

無視されるのは、それだけで充分精神的に辛い。

ある日学校に来たら、私の上履きがなくなっていた。

クラスメイトの女子が数人、私を見てニヤニヤ笑っている。

悪意に満ちた嫌な笑みだ。

私は靴下のまま、教室に行くことになった。

何も知らない人達の奇異な視線がとても痛い。

クラスに入り、担任がその事に気づいた。

そして、私の上履きは、トイレの中に投げ込まれているのを他のクラスの子が見つけた。

無視だけで、すまなくなった。

彼女達の行動は、どんどんエスカレートしていった。

教科書がなくなるのは当たり前。破かれることも当たり前。

机には酷い言葉が書かれているのも。

下駄箱の中に、ゴミが入っているのも。

いつか教室に入ったら、私の机も椅子もなくなったいるのではないかと、私は怖い。

彼女達は、私の心に突き刺さるような言葉ばかりいい、精神を傷つける。

 


そんなある日、私のクラスに転校生がやってきた。

男の子だった。

どこか垢抜けていて、笑顔で新しいクラスメイトを見ている。

背が高く、整った顔立ちをしている。

女子たちが一斉にヒソヒソと彼のことを話す。

担任が、転校生の名前を黒板に書いた。

雨宮凛―――凛は笑顔で、元気な声で言った。

「雨宮凛です。宜しくお願いします」

とても透明で綺麗な声だった。

担任は雨宮君に席を教えてあげた。雨宮君の席は私の隣だった。

よりによって私の隣だった。

女子達の嫉妬の眼差しをヒシヒシと感じる。

雨宮君にはわからない。

このクラスがかつて彼がいた学校のように、平穏なクラスではないということを。

きっとこれからも、もっと酷い仕打ちを私は受けるんだろう。

「初めまして。雨宮です。名前は何て言うの?」

雨宮君は席に着くと、私に笑顔で挨拶した。

美少年がすぐ傍にいることに私は緊張し、顔を俯いた。

「雨宮君、高橋さんと話すと陰気臭くなるよ~」

私が口ごもっていると、女子が言った。そして、女子達が笑った。

私は恥ずかしさと辛さで、この場から消えたいと思った。

彼が私の隣でなければ、こんなことにもならなかったのに。

私は担任も恨んだ。

けれど、雨宮君は驚いた表情で女子達を見た。

「どうしてそういう事言うの?そんなこと言っちゃダメだよ」

女子達は気まずそうな顔をして、そして私を睨み、視線をそらした。

雨宮君は少し困った顔をしながら、私を見た。

「えーっと高橋…さんだよね?とにかく気にしないほうがいいよ」

私は久しぶりに、人の温かさに触れた気がした。

お礼を言いたかったが、のどに詰まって言えなかった。

涙が出そうになり、私はずっと俯いていた。

雨宮君は、その人懐っこい性格と整った容姿で、クラスの皆から慕われた。

学校が終わるまで、彼の周りには常に人がいっぱいいた。

 

放課後。

女子達に教室に残るよう言われた。嫌な予感がした。

しかし、従わなければ、今までより酷い目に遭うだろう。

案の定、雨宮君の事で彼女達は怒っていた。

恥をかいた、と彼女達は言う。

雨宮君に近寄るな、とも言った。

今まで殴られたりしなかったが、今度は殴られたり、蹴られた。

数人に囲まれて殴るから、逃げるにも逃げれない。

さらに私の服を脱がし、恥ずかしい写真を携帯で撮られた。

痛みと悔しさと辛さが身に染みる。

彼女達は気がすんだのか、ボロボロになった私を置いて出て行った。

もう生きていけない。

生きていくのが辛い。

私は鞄からカッターを取り出した。

もう生きていたくない。

もう死にたい。

私はただ、それだけを願っていた。

手首にカッターを当て、切ろうとした刹那、誰かが教室の扉を開いた。

反射的に振り向くと、そこには雨宮君が立っていた。

どうしよう。

誰も来ないと思ったのに。

こんな姿を見られるなんて…。

どうしよう。どうしよう。

私はパニックに落ちてた。

「高橋さん」

不意に雨宮君が私の名を呼んだ。

彼は、にこりと微笑んでいる。

そして、私の元に来てしゃがむと、私の手首を掴んだ。

じっと私の手首を見ている。

「辛かったでしょう?死にたいと思ったでしょう?でもね、何も死ぬことはないよ」

雨宮君は優しく、子供をなだめるように言った。

彼の意外な言葉に、私が固まっていると、彼は優しく微笑んだ。

「僕がいじめの代わりになってあげるよ」

「え?」

今、彼はなんて言った。

いじめの代わりになる?

一体何を言っているのだろうか。理解できない。

けれど、雨宮君は穏やかに微笑んだまま。

「いじめられたくないでしょう。恥ずかしい写真もばら撒かれたくないでしょう?」

「!…どうして、それを」

「僕は何でも知ってるよ。ねぇ、いじめられたくないでしょう?」

雨宮君は再度私に問いかけた。

彼の言葉に私は頷いた。誰がいじめられて嬉しいのだろうか。

私は普通の人生を送りたいだけ。

いじめから抜け出したいだけ。

「じゃあ僕が身代わりなってあげる。そうしたら、君は明日からいじめられないよ」

「…本当に?」

私が訝しげに聞くと、雨宮君は「うん」と頷いた。

そして、私の手首を強く掴んだ。

この時、私は雨宮君を怖いと思った。

なんだか彼は、他の人とは違うのだ。

「けど、代わりに君の手を僕にちょうだい」

さっきまで優しく微笑んでいた雨宮君とは思えないほど、冷たい笑みだった。

怖い、彼は一体何を言っているんだろう。

得体の知れないものに彼がなっている気がした。

「だって君の手、とても綺麗だもん。白いし滑らかできめ細かいし。別にいいでしょ?

死ぬより手がない方がマシだと思うけど。それにもういじめられなくなるんだよ」

いじめられなくなる―――。

その言葉が私の心を揺らめかせる。

そうだ、私はさっき死のうとしたのだ。

それはいじめが原因で。

生きていくことが辛いと思ったのは、全ていじめのせい。

私は怖ろしい取引だとわかっているが、雨宮君に手をあげることにした。

それに彼の言っていることは、嘘かもしれない。

彼は、とても嬉しそうだった。

「約束だよ。いじめられなくなったら、僕に手を差し出すんだよ」

私は彼の言葉に再度頷いた。

 

次の日、私は学校に登校した。

正直、雨宮君の言うことを信じたわけではない。

むしろ、あれは夢だったのではないかと思えた。

重い足取りでクラスに入ると、私に気づいた子達が挨拶してくれた。

「おはよう、かおり!」

「どうしたの?顔色悪いんじゃない?」

私は驚いて、彼女達の顔を見つめてしまった。

いじめられる前と同じ時に私と接している。

皆、私に普通通りに接してくれたのだ。

私は嬉しかった。

雨宮君の言うとおり、私はいじめられなくなった。

私が友達と久しぶりの談笑をしていると、誰かが教室に入ってきた。

それは雨宮君だった。

一気に教室の雰囲気が変わった。

女子達がヒソヒソと彼の悪口を言うのが聞こえた。

男子の誰かが足を出し、雨宮君はつまづいて転んだ。

クラスの皆が彼を嘲笑った。

その日から、雨宮君は皆からいじめられた。

私はできるだけ、彼がいじめられている現場に会わない様にした。

彼は確かに私の恩人だ。

しかし、私にいじめを止めることなんてできない。

もし止めたりして、私がまたいじめられることを考えると怖くて出来なかった。

それに、彼自らが望んだ状況だ。私が止めても意味がない。

私は自分にそう言い聞かせた。

しかし、雨宮君が無言で私を責めているような気がした。

男子達は彼を殴ったりしていた。女子もそれに参加したりする。

放課後、彼を殴ったりするのが習慣になっていた。

 

私はいつものように、放課後すぐ帰ろうとした。

雨宮君がまたいじめられているのだ。

皆から殴られたり、蹴られたりしている。

「かおり、あんたも参加しなよ」

帰ろうとする私を女子の一人が呼び止めた。

皆が一斉に私を見る。

「かおりは、いつもすぐ帰るよね。今日ぐらい参加しなよ」

その子の言葉に皆が同調しだした。

「俺達の仲間になるのが嫌なのか?」

男子の一人がそう言った。

もし、ここで私が参加しなかったりしたら、いじめられるのだろうか。

怖かった。皆から仲間はずれにされることが、怖かった。

けれど、雨宮君を殴ることも蹴ることもできない。

しかし、女子の一人が私の腕を掴み、うずくまっている雨宮君の前に立たせた。

「かおりは初めてだから、ホウキでも持って殴っちゃいなよ」

その子は、私に無理矢理ホウキを持たせた。

「できないはずないよな?俺たち、仲間なんだから」

「そうだよ。私達、友達でしょう」

皆、口々にそう言う。

私は震えを押さえ、ホウキで雨宮君を叩いた。

不意に雨宮君が私を見た。

その目は、私を責めているようだった。

恩知らず。最低な人間だな。

目は私を責める。

気がつくと、私は夢中で彼を叩いた。

そんな目で私を見ないで。

見ないで、見ないで、見ないで。

私は悪くない。仕方がなかった。これは仕方がないことだ。

皆、私に叩かれ無抵抗な雨宮君を笑った。

雨宮君は、私が殴ったホウキがお腹に入ったのか、胃液を吐いた。

「やだーかおり、興奮しすぎ!!」

「ハハハ!!!高橋、お前最高だよ!!」

皆、口々に私を褒めた。

私はその日から、毎日、雨宮君を殴ることに参加した。

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