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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 18:10 ×
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December / 29 Fri 21:56 ×
事の始まりは梨花が居なくなった事だった。

最初、梨花は高校に三日ほど突然来なくなった。そして、学校に親から連絡があった。

梨花が行方不明ということだ。担任がクラスの皆にその事を伝え、教室がざわめいた。

拓哉は圭を見た。圭は無表情だった。




梨花は今時の女子高生で、いつも元気で可愛い女の子だ。そして、圭は梨花の彼氏だ。

圭はどちらかと言うと、物静かで整った顔をしている。そのせいか同級生とあまり仲良くなかった。

頭が良くて、いつも梨花に勉強を教えてあげていた。

拓哉は圭の親友で、圭とは正反対のタイプだった。そして、よく三人で遊んだりした。




朝のHRが終わり、拓哉は圭の方に向かった。圭には動揺の色が見えない。

拓哉の言いたい事を悟ってか、拓哉が口を開く前に圭が遮った。

「おととい、警察が家に来て梨花の事を聞かれた。その日、俺は梨花と一緒に帰っていたから疑うのも自然だろう。

電話しても梨花の携帯に繋がらなかった」

「俺の方にも警察が来た。俺、部活で帰り遅かったからわからないって答えたんだ」

「そうか……アイツも人に迷惑ばっかりかけないで欲しいものだ。拓哉にまで迷惑かけて悪い」

圭はバツが悪そうに、はにかんだ。拓哉はそんな圭と違って、青ざめていた。

圭は何を考えているのか、わからない所がある。親友の拓哉ですら、わからないのだ。

「……梨花が……心配じゃないのか?」

拓哉は圭の目を見た。拓哉の目に怯えが、明らかに含まれている。

圭は一瞬驚いた表情をしたが、苦笑した。

「心配だけど、どうすることもできないだろ?」

拓哉は圭のその言葉で、背中に悪寒が走るのを感じた。




学校が終わり、放課後。

圭と拓哉は二人で一緒に帰っていた。

二人の間は無言が支配していた。

「圭……寄りたい所あるんだけど……良い?」

無言を破ったのは、拓哉だった。圭は興味無さ気だったが、頷いた。

拓哉が連れてきたのは、公園だった。誰も来なさそうな古い小さな公園。

拓哉は公園の奥にある池の前で止まった。池は底が見えないほど、濁っている。

「ここに、何があるんだ?」

圭は眉をしかめた。拓哉は圭に背を向けたまま、何も答えない。

「拓哉、黙っていないで答えろ」

苛立ちながら圭は再度、拓哉に問いかけた。しかし、拓哉は無言だった。

「一体どうしたんだ?今日のお前変だぞ」

圭は拓哉の様子がおかしい事に気づいた。いや、朝からおかしかったのだ。気づいていたが知らないふりをしていたのだ。

拓哉は何かに、怯えているようだった。

「圭……俺、知ってるんだよ」

公園に来て、初めて拓哉は口を開いた。そして、振り返った。

悲しそうな、辛そうな顔をして、圭を見ている。圭は不思議そうな顔で拓哉を見た。

「何をだ?」

「圭が……圭が……」

拓哉の声は震えていた。圭は腕を組み、苛立っている。

そして、拓哉はぼそっと言った。




「……梨花を殺したんでしょ……」




圭は無表情だった。拓哉の顔は青ざめ、恐ろしい事実を伝えるため、震える声を絞り出す。

「俺、部活で遅くなって、たまたま、ここの前、通ったんだ。

それで、なんか、知っている女の声がすると思って、圭と梨花がいて……そんで、圭が」

「拓哉、見てたのか」

圭の声は意外にも穏やかだった。一歩、足を出し拓哉に近づく。

「どうしてだよっ!!何で、何で、梨花を!!」

拓哉は圭の肩を掴み、激しく揺さぶった。瞳に涙がたまっている。

しかし、拓哉とは対照的に圭は落ち着いていた。

「落ち着け拓哉。俺は梨花が、好きじゃなかったんだ」

圭は淡々と穏やかな声で言った。まるで、それは子供をあやすようだった。

拓哉はその言葉を聞いて、動きを止めた。力なく圭の肩から手を離した。

圭は乱れた制服を整え、静かに語った。

「あの日、梨花に別れ話を持ち出したんだ」

圭は、前々から梨花に嫌気をさしていたと言う。

最初は、圭とは正反対な明るく、おしゃべりなところに梨花に惹かれた。

だが、しかし、梨花は圭にお構いなしに家に訪れ、携帯を勝手に見ては、女の名があろうものなら、圭に怒ったと言う。

その自己中心的な性格に、圭自身、疲れてしまったのだ。しかし、梨花は圭にべた惚れしていた。

そして、この公園で口論になった。圭はその事を既に予想していたので、当初の予定通り梨花を殺害した。

梨花に重りをつけ、この池に落とした。

「でも、まさか拓哉が見ていたなんて……ね」

「……圭」

拓哉は落ち着いたのか、圭を真っ直ぐ見た。そして、震えた。圭は苦笑していた。

「だからさ、拓哉。誰にも言わないで欲しいんだ」

圭は拓哉に微笑んだ。無邪気な笑みだった。拓哉は俯き、黙っている。

「俺達は親友だろ?梨花が居なくなったぐらいなんともない。これからも上手くいく」

その刹那、圭は何が起きたか訳がわからなくなっていた。

腹に鈍い激痛が走った。液体が流れる感触。圭は反射的に、赤い液体が流れる腹を押さえた。

力が抜け、地面に膝をつく。首を上げると、拓哉が泣きながら圭を見下ろしていた。

手には、赤く鈍く光るナイフがあった。

圭は全てを理解した。拓哉が圭を刺したのだ。

しかし、何故?どうして拓哉が自分を刺すのだろう。

痛みで身体が地面に沈む。

「わからない……俺にはわからないよぉ……なんで……梨花を殺したんだよ」

拓哉の声はか細く、小さい。圭は意識が遠くなるのを感じた。

しかし、決して意識を離さないよう拓哉の言葉に耳を傾けた。口から血が流れる。

拓哉は、右手で涙を拭きながら呟く。

「俺は……梨花が好きだったのに……でも、でも、圭なら……圭なら許せたのに」

その言葉に、圭は全て納得した。

拓哉は梨花が好きだったのだ。だから、梨花を殺した自分を刺したのか。

もし、その事に気づいていればこんな事にならなかったかもしれない。そんな事が頭によぎった。

もう自分は死ぬんだな。圭はそれだけ思った。

「圭……俺、もう生きていけないよ……人殺しになっちゃったよ……」

圭はもう事切れていた。拓哉は泣きながら笑っていた。自分の首にナイフを当て勢いよく切った。

鮮血がほとばしり、拓哉も地面に倒れた。

拓哉は静かに瞳を閉じた。瞼の裏に三人で楽しく過ごした光景がありありと甦ってくる。

涙が一筋、流れ落ちた。
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