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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
April / 20 Sun 16:05 ×
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December / 29 Fri 22:07 ×
学校には色々な人がいる。

私は独りでいる方が好きだから自分で誰かに話しかけるような事はしない。

正直独りでいる時、寂しいって感じるけどやっぱ独りは気楽だ。

けれど、人というものは誰も知らない新しい環境にいると誰彼かまわず話しかけるようだ。

彼女はそんな中、私に話しかけてきた子だ。

最初、私達はぎこちなく会話した。お互い緊張していたからだろう。

毎日顔を合わすようになり、私達は仲良くなった。

彼女は可愛い子で我が侭なところがあるが、私はたいして気にならなかった。

なにより彼女といると楽しかったから。

前、彼女と二人で話した時、彼女は笑顔で私にこう言った。

「私、あなたの事を一番信頼しているよ」

正直、そう言われ嬉しかった。私も嬉しくて笑顔で返した。

彼女といる時は本当に楽しかった。

私は彼女以外にも知り合いは沢山出来た。けれど、私の一番の友達はやっぱり彼女だった。

いつも授業が終わると彼女は私を次の授業のクラスに送って行ってくれた。

ある日、いつもの様に授業が終わった。

彼女は私に笑顔で「バイバイ」っと言った。

えっ?

私はその場で凍りついた。

なぜ?いつも私を送って行ってくれたじゃない。どうしてそう言うの?

しかし、私は平静を装い、「バイバイ」と言った。

彼女は私の知らない人とクラスを出て行った。とても楽しそうに。

その日以来、彼女は授業が終わると彼女の友達とすぐ帰ってしまった。

私は一人、次の教室に行った。

独り歩きながら考えた。

私は彼女に何かしたのだろうか?

けれど彼女はいつも通りだし、授業が終わったら別の子と帰ってしまうだけだ。

私は彼女の友達に嫉妬しているのだと気付いた。彼女は私のものだと考えていたのだ。

私は己を恥じた。

彼女にだって私以外の友達がいる。私以外の友達と仲が良いのも当然だ。

私は【彼女の唯一の友達】と思っていたのだろう。なんておこがましい人間だろう。

その日、自分の醜さに気付き、私は恥かしかった。

次の日、私は彼女の友達に嫉妬は湧かなかった。

でも、私はなんとなくわかっていた。

もう彼女と一緒にはいられないだろうと。

私は知らないふりをした。





ある日、彼女は私に頼みごとをしてきた。いつもの彼女の我が侭な頼み。

別に難しい事ではなかったので、私は引き受けた。

私達は約束した。

約束当日、約束の時間になっても彼女から連絡がなかった。

彼女は【また】約束を忘れているのかもしれない。

過去にも彼女は私との約束を二回破っている。

しかも全部彼女から約束したものだ。

その度、私は怒ったが数時間後には怒りも収まっていた。

彼女も私に謝った。私はいつも許してあげた。だからいつも通りの仲になった。

けれど、今回のは前のと違った。

約束の時間が過ぎても彼女は来ないので電話をした。

「もしもし、どーしたの?」

彼女ののんきな声。私は頭を抑えた。これはすっかり私との約束を忘れている。

「……今どこにいるの?」

「今ね、家にいるの!家でDVD見てるよ~」

「そう、なんとなく暇だから電話しただけ。じゃあね」

私はそう言って電話を切った。約束を忘れている人に何か言うのもめんどくさかった。

はっきり言って彼女には腹が立つ。

しかし、腹が立っても意味がない。私はそのことをよく理解しているつもりだ。

私は「時間を無駄にしたなぁ~」と呟き、一人で買い物に行く事にした。

不意に目に止まるものがあった。

いつもよりおめかしした彼女がいた。誰かを待っているのかそわそわしている。

彼女の顔が笑顔になった。彼女の視線の先には【私の知っている男】がいた。

彼は私の男友達でもあり彼女の友達でもある。

私は彼女と彼が付き合っていると思っていたが、彼女は「あんな奴だいっ嫌い!!!」っと言って、彼と縁を切った……はずだ。

なぜ、彼女と彼は会っているのだろう。縁を切ったのではないのだろうか。

そして、彼女は彼に抱きついた。彼も彼女を抱きしめると、二人で仲良く人混みに消えていった。

私は呆然と二人を見送っていた。


私は彼女と今日会う約束をした。

さっき、彼女に電話したら彼女は「家にいる」と言った。

私の目の前で【家にいるはずの彼女】が男に会って、何所かに出かけてしまった。


これが【信頼している友達】にする事なのだろうか。

友達との約束を忘れ、嘘をつき、【縁を切った男】と二人っきりで会う……。

「ははは」

馬鹿馬鹿しくて私は笑った。乾いた笑いだった。

本当は彼女が私に嘘を付いている事を知っていた。

彼に会っていない。と言いながら密かに会っている事を。

知らないふりをしていた。彼女はいつか言ってくれるだろうと信じていた。

家に帰ろう。もう買い物なんかする気分じゃない。

さぁ、明日彼女にいつも通りの笑顔で接しよう。

彼女もいつも通り私に笑顔を向けるだろう。

私はまた一人で笑った。




次の日、私は彼女と二人っきりでいた。

いつもの事だ。彼女と一緒にいる事が日常だったのだ。

彼女が色々話す。私は相槌を打つ。

不意に会話が止まった。

「ねぇ、昨日私と約束してたよね?」

私は静かにそう切り出した。一瞬、彼女は驚いた表情をしたが、すぐ頭を下げた。

「ごめーん!!忘れてた!!!本当にごめーん!!!!」

いつもの様に必死に謝る彼女。私はにこりと微笑んだ。その笑顔に彼女はほっとした。

「昨日、私はあなたが男と一緒にいるところを見ていたんだよ」

彼女の顔はみるみるうちに青褪めた。「しまった!」とでも思っているのだろうか。

私は一気に畳み掛けた。今までの彼女に対する怒りをぶつけるように。

「しかもその男はあなたが【縁を切って二度と会っていない人】だったよ。

そういえば、私が電話した時、あなたは「家にいる」って言ってたよね?

どうしてあなたは男と二人で外に出かけていたのかな?」

彼女は立ち尽くしていた。罪悪感で胸がいっぱいなのだろうか。私には彼女の心を知るよしもない。

「ご…ごめん…嘘ついてご、ごめん」

彼女は顔を下に向けてた。涙声で彼女は言った。涙を堪えているのだろうか。

本当にどこまでも自分勝手な子。私は溜息一つ吐いた。

「でも!これには、理由があって…!!」

目に涙をため、彼女は顔を上げて私に言った。

彼女の言い訳なんかに耳を貸すつもりなんて最初っからない。

「私はもうあなたの事を二度と助けないし、会うつもりもない。さようなら」

私はそう言ってくるりと背を向けた。後ろを振り返る気なんてない。

裏切ったのは彼女の方。

私は彼女を信頼していた。だから約束も守ったし、彼女が困ればいつも助けていた。

それとも、それが私のエゴだったのだろうか?

私は私を信頼してくれる人を大切にした。

けれど、彼女は私に嘘をついた。約束を破った。私よりも男をとった。

それが悲しかったし、悔しかった。

彼女が私を次の授業に送らなくなった日からこうなる事はわかっていた。

二人の歯車は噛み合わなくなっていた。

彼女は酷い人だった。縁を切って正解だ。

けれど、何故だろう。

私は泣いていた。

彼女との楽しかった思い出ばかりが溢れてくる。
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