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創作短編小説です。 基本的にダークです。 ですので、死とか血とかでます。 ホラーです。
May / 04 Sat 12:17 ×
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December / 29 Fri 22:33 ×
夜九時は回っていただろう。満月が顔を出している。

楓は神社に向かっていた。昔遊んだ懐かしいあの神社に。

いつもより長く高い階段を上ると、椿が楓を待っていた。

楓を見ると笑みを浮かべる。

「楓先輩」

楓は椿の笑顔を見て背筋が凍りつくのを感じた。

いつもの椿。なのにどうして、こんなに不安になるのだろう。

「椿」

何かが違う。近づいてはいけない。本能がそう告げている。

しかし、確かめずにはいられない。

楓は怯える本能を抑え、椿に近づく。椿は不思議そうに楓を見ている。

「話って何ですか?楓先輩」

椿は一歩楓に近づいた。楓はその場で足を止めた。

呼吸を整え、後ろに隠し持っているナイフを握り締める。

椿が不意にくすっと笑った。

「もしかして、怖い?俺を殺す事が」

「えっ―――?」

楓の腹に鈍い痛みが走る。椿の顔がすぐそこにあった。

楓の手からナイフが音を立てて、地面に落ちた。

笑っている。とても嬉しそうに笑っている。

「どうして―――」

「残念だったね、楓先輩」

椿は楓の腹からナイフを抜き取ると今度は左胸に刺した。

「とっと死ねよ!!変態が!!!」

決定的な一打を与え、楓は地面に崩れ落ちた。椿は笑う。

「どうして、だって?笑わせんなよ!!このストーカーが!!!」

楓を見下ろしながら、椿は吐き捨てる様に言った。

汚物でも見るような蔑んだ瞳で楓を見た。

息絶えたのを確認して、椿は一息はいた。

そして、空を仰いだ。

さっきまでの気迫はまるで嘘の様に今はとても哀しそうな顔をしている。

「あんたが姉さんをストーカーしてたのを俺は信じたくなかった。

俺はあんたを尊敬していたから。あんたは優しくて、いつも俺達を守ってくれた。

だから、俺はあんたみたいになろうと思った。でも、カメラにあんたが写っていた。

姉さんのゴミ袋をあさる、あんたが写っていたんだ」

静かに淡々と椿は語った。

椿はまた楓―――だった物を見た。その瞳は憎悪に満ちていた。

「俺達を裏切ったあんたを俺は許せなかった!」

「椿」

「……姉さん」

木の陰から雫が出てきた。雫は静かに微笑んでいる。

楓を殺す事を計画したのは、雫の案だったのだ。

ストーカー行為に雫は精神を病み、一時入院したほどだった。

椿は決心した。絶対に楓を殺すと。雫も同じ気持ちだった。

そして、計画を実行したのだ。

雫が楓に椿を殺すように唆す。

そして、神社で待機している椿が隙をついて、楓を殺害する。

「椿、疲れたでしょう?これでも飲んで」

「姉さん……ありがと」

雫は椿に暖かい缶コーヒーを椿にあげた。缶はもう開けてある。

椿は缶コーヒーを一口飲んだ。

「椿。私ね、もう一人殺したい人がいるの」

「誰?俺が殺してあげる」

椿は雫に微笑んだ。雫も椿を見て微笑んだ。

「そう……じゃあ死んでよ、椿」

椿は自分の耳を疑った。

今、雫は何て言った?死ねと言ったのか?自分に?何故?

頭が混乱してくる。不意に椿は、苦しさに嗚咽した。

「苦しい、椿?さっきのコーヒーね、薬入れておいたの。即効性の毒よ」

雫は相変わらず微笑んでいる。椿は苦しさのあまり地面に崩れる。

「ねぇ…さ…ん……どう…し…て」

途切れ途切れ椿はそれだけ言えた。雫は、静かに微笑んでいる。

その時、椿は気付いた。

雫の笑顔はなんて綺麗で何もないのだろう―――。

「だって椿も楓君も気持ち悪いんですもの。

どうして、私にかまうの?私は一人で色々やりたいのに邪魔ばっかりする。

楓君も椿も私が他の男の子と少し話すだけで、その子を虐める。

椿はずっと私から離れてくれない。楓君は私をストーカーする」

椿は自分の意識が遠のくのを感じた。

「でもね、椿。私、貴方の事愛しているのよ。

本当よ。気持ち悪くてどうしようもない貴方だけど愛しているのよ。

だって、貴方は私なんですから。

それに一つの舞台に二人は要らないのよ。

同じ人間は二人も要らないの。椿と私は元々一つ。

椿が消えて、私は完璧になるの。どう?とっても素敵でしょう」

雫は歌うように言った。雫は笑っていた。とても美しい笑みで―――。

雫は上機嫌で神社を降りた。一度も後ろを振り返らずに。

満月が二つの死体を照らしてた。


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